プロット

文字数 3,583文字

【あらすじ】

過去に戻って手紙を届ける仕事をやることになった女の子が、やがて過去に起こった事故を防ぐために奮闘する。


【プロット】

1・
真友(まゆ)はごく普通の小学校6年生の女の子。ある日、下校途中に街角でイケメンの男の子とぶつかる。あわてて謝ると、彼は何事もなかったように自転車に乗って行こうとした。あせっているようだ。するとそこにトラックが近づいて来た。真友はあわてて男の子を守るため突き飛ばす。
突き飛ばした拍子に、男の子は足を怪我してしまった。「でも、仕事が残ってるんだ……」。男の子は自転車にまたがるが、足をおさえて痛がり、真友は引き止める。「私が代わりに行く!」 男の子は「誰にでもできる仕事じゃない」とつっぱねて行こうとするが、足が痛くて動きづらいようだ。真友と押し問答をしていると、男の子がカバンを落とす。中に入っていたのは、三通の手紙。一番上の手紙の宛名には、既に亡くなった近所のおばあさんの名前が……。

真友が話を聞いてみると、男の子の仕事は「時間郵便配達員」。様々な事情で、もう届けることのできない手紙を預かるポストがあって、そこで預かった手紙を過去に戻って届ける仕事だ。
真友は「面白そう!」と目を輝かせる。男の子は怪我のこともあり、しかたなく真友を「配達員」の代行に任命することにした。男の子の名前は、トキヤ。


2・
「配達員」には、「時間郵便局」が定めたルールがある。
その1・未来で起こる出来事を過去の人間に教えるのは禁止。そのため、手紙の内容は事前に「配達員」がチェックする。
その2・「配達員」は手紙を渡したら、すぐに元の時代に帰ること。
その3・「配達員」の仕事以外で、自転車を使ってタイムジャンプをしてはならない。
以上のルールをもしやぶったら、ペナルティがある。
「このルールは絶対だからな!」 念をおすトキヤに、能天気に答える真友。「大丈夫、大丈夫。わかってるって!」

さっそく「配達員」専用の自転車「トキカケ」にまたがり、タイムジャンプした。トキヤは専用のたぬき型映像送受信レシーバー「デンポコ」から指示を出す。最初の配達先は、さっき真友が手紙を見た近所のおばあさん。真友が会いにいくと、亡くなったおばあさんが出てきた。真友はなつかしむが、おばあさんはキョトンとする。
手紙はおじいさんからだった。おばあさんが亡くなる前に伝えたかった思いを手紙にしたためたらしい。おばあさんは喜んで、真友に話をしてくれた。来年は二人で思い出の遊園地のアニバーサリーイベントに行くのが夢だと語ってくれた。

そのとき、真友は思い出す。たしかおばあさんは年を越す前、急に体調をくずし亡くなってしまうのだと。おばあさんに「遊園地には今のうちに行っておいた方がいいと……」と言いかけたときだ。レシーバー「デンポコ」を通して、トキヤに注意される。
「ルールその1・未来で起こる出来事を過去の人間に教えるのは禁止!」。
真友はしかたなくおばあさんに別れを告げたものの、モヤモヤした思いは残った。


3・
次の届け先は高校生の男子。片思いをしていた女子が、転校前に伝えておきたかった思いを手紙に書いていた。彼は、彼女がもうすぐ駅から列車に乗って町を離れてしまうことを知っていたが、手紙を読んで最後に会いたくなる。だけど、決心がつかない。
「このまま別れちゃっていいの?」 真友の言葉で決心した彼は、自転車に飛び乗って駅に向かう。真友は「早く帰れ!」というトキヤの言葉を無視して、自転車で追いかけた。
しかし駅に着いた丁度そのとき、列車が出発してしまった。彼は、なんとか手を振ることだけはできた。
「だけど、最後に話したかったなあ……」。そうつぶやく彼の姿を見て、真友はひらめいた。そして「ねえ、この自転車なら過去に戻れるけど……」と告げる。
すると、トキヤの怒号が飛んだ。「いい加減にしろっ! ルールを忘れたのか!? 配達以外でのタイムジャンプ禁止だ! 早く戻ってこい!!」

元の時代に戻っても、トキヤは相変わらず怒っている。「もし時間郵便局にルール違反が発覚したら、ペナルティがあるんだぞ!」 ルールばかりやかましくいうトキヤに、不満をもらす真友。「いったい、どんなペナルティがあるっていうの? もしかして、配達員をやめさせられるとか? べつにそんなの何でもないんだけど?」 
するとトキヤは、急にしんみりした顔になった。「……その逆だ。ルールを破ったら、過去のすべての記憶を奪われて、永久に配達員として仕事をしなくちゃならないんだ……」

絶句する真友。トキヤは過去に、ルール違反をしてしまったという。「今のオレは、家族の顔も、友達の顔も、生まれ育った家や街のことも何ひとつ思い出せない。ずっと配達員として働いている。だから、真友を同じに目に遭わせたくはないんだ……」 真友はトキヤの告白を聞いて、感情的になってしまったことを反省し、今回の最後の手紙を届けに向かった。


4・
最後の手紙の届け先は、小学校一年生の男の子。差出人はその子のお母さん。この手紙だけは、まだトキヤが事前にチェックしていなかったため、手紙の内容を先に読む真友。そこには、息子への日頃の感謝の想いがつづられていた。真友は不思議に思う。「どうしてお母さんが、わざわざ自分の子供にこんな手紙を?」 
すると、トキヤが教えてくれた。「その男の子は、このあと川に落ちて流され、今も病院のベッドで目を覚まさないんだ……」 それを聞いて、ショックを受ける真友。

 真友は男の子に手紙を渡そうとするが、手が震えてしまう。「ルールその1・未来で起こる出来事を過去の人間に教えるのは禁止」。それはわかっているが、果たして本当にこのままでいいのだろうか? という思いが胸に浮かぶ。レシーバー「デンポコ」からは、トキヤの声が響く。「早く手紙を渡せ。それで仕事は終わりだ」 
真友は手紙を男の子に差し出す。男の子が手を伸ばしたそのとき、土壇場で手紙を取り上げた。トキヤはびっくりする。「おい、どういうつもりだ!?」 真友はいった。
「ルールその2・手紙を渡したら、すぐに元の時代に帰る。逆にいえば、手紙を渡すまで帰らなくていいんでしょ!?」
「ム、ムチャクチャだ~!!」

真友は男の子の手をにぎり、事故の時間まで、川のない場所に連れて行こうとする。しかし男の子に暴れられ、逃げられてしまう。結局、木にのぼって川に落ちそうになってしまう男の子。真友は男の子のところまで行ってなんとか救助するものの、一緒に落ちて、川の中州に取り残されてしまった。
しかも雨が降ってきて、次第に増水してきた。一刻も早く川岸に渡らないと危険だ。「トキカケ」に乗って逃げようとするが、そもそも前進しながらでないとタイムジャンプすることはできない。真友は男の子を自転車に乗せて、ターボをかけて川を渡ろうとする。川は流れが速く、行けるかは微妙だ。

そのとき、真友が自分のつけてるバレッタを髪からはずして、川岸に投げた。
「トキヤ。未来の世界にこれがあるか、探して!」 いわれた通り、川岸を捜すトキヤ。「あったぞ! だけど、これがどうしたんだ!?」「……もし私が失敗したら、それを私の形見として、お父さんとお母さんに渡してほしいの」「何いってるんだ!」「お願い!」
しばらくためらったあと、「……わかった」とつぶやくトキヤ。「俺は配達員だ。一度引き受けたら、必ず届ける。だけど、俺が本当に届けたいのは、これの持ち主だからな!」「……わかってるって!」 真友は、自転車のハンドルを握る手に力を込めた。

「俺がタイミングを計る。合図したら、エンジン全開で一気に進め!」
そして最後に、トキヤは真友に告げた。「未来で待ってるからな、必ず戻ってこい! 俺は、真友がいる未来が好きだ!」「OK、わかった!」
そしてタイミングを合わせ、見事、川から脱出することに成功した。真友は男の子を降ろすと、そのまま元の時代に帰った。

元の時代に戻った真友。しかし、手紙を渡すのをすっかり忘れていた。手紙はびしょ濡れだ。そのとき、男の子がお母さんと通りかかった。男の子は真友のことを覚えていて、近づいてきた。真友は手紙を渡そうとして、トキヤに止められる。「今さら渡しても、混乱させるだけだ。それに、感謝の言葉は直接口で伝えるのが一番だからな」
「ところで……」 川を渡る前、最後にトキヤがいったセリフ。「俺は、真友がいる未来が好きだ!」 真友は、あのセリフの真意を問いただそうと思ったが、やめておいた。

エピローグ・
後日、トキヤの足はすっかりよくなり、真友に別れを告げる。しかし真友は、ある決心をトキヤに伝えた。それは、トキヤが過去の記憶をどうにか取り戻す方法を見つけ出すこと。そのために、これからも一緒に「配達員」を続けていくことを決意したのだった。



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