第1話 プロローグ

文字数 833文字

「私が何とかしなくっちゃいけない!」故あって、お風呂の世界に飛び込むこととなった私、風俗とは無縁、知識は皆無だったので、情報の断片を寄せ集め、全店舗スキン着のソープ街、川崎の店に狙いを定め、面接希望の電話を掛けた。ハードルの低そうな大衆店、電話口の担当者の声は普通の会社員のように穏やかで、怖い所という先入観が解けてほっとした。川崎駅で店からの迎えの車に乗りドキドキ、「ほんとに働くのかな私?」でも他に選択肢はなさそうなので度胸を決めた。到着した店はいかがわしさもなく、思ったよりずっと普通に見えた。狭い事務所に通されて、やって来たのは初老の穏やかな男性、「ソープは初めて?あれ、風俗も初めてなの?いきなりディープなところに来たんだね!いいよ大丈夫、じゃあ頑張ってみようか。」えっ、面接もう終わり?あまりのあっけなさに、拍子抜けした。ランチタイムはとっくに過ぎていたが、なぜか出前の天丼をとってくれて、帰りには交通費も渡された。「いつから働く?えっ明日?問題ないよ、なら講習なしで素人新人でいこう。」何しろソープの知識は皆無、何を言われているかまるで理解していなかったが、とにかくその、素人新人で頑張るしかないと思った。翌日約束の時間に店に着くと、直ぐに紫色のドレスを渡された。「優香ちゃんでいこう。前の優香ちゃんも人気だったからね。君は電話の段階で採用決めたよ、きっと人気でるよ!」面接の男性は社長だった。幸か不幸か社長の理由なき太鼓判をもらい、訳もわからぬまま接客用の部屋へ案内された。ベッドやお風呂の使い方を適当に説明されると、直ぐにお客様が来ると伝えられた。正にぶっつけ「本番」じゃないか。もうなるようになれ!初めてすることじゃないし、、いや初めてのお仕事、初体験か?困惑と不安の初仕事、本能と煩悩の絡み合う肉弾戦は私の大勝利に終わったと言えよう。窮地に追い込まれた私に訪れた、奇跡の始まりだった。かくしてこれが、ソープ嬢「優香ちゃん」が誕生した瞬間だった。
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