第1話

文字数 1,213文字

 いちごちゃんのピアノ

 いちごちゃんは、ピアノをひくのがだいすきなおんなのこ。
「おばあちゃん、いい?きいててね」
 そういって、おばあちゃんにきいてもらい、まいにちピアノをひきます。
 いちごちゃんのピアノは、だんだんじょうずになっていきました。おばあちゃんは、とってもうれしそう。
「きれいなねいろね。おばあちゃんは、いちごちゃんのピアノがだいすきよ」

 あるひ、いつものように、いちごちゃんがおばあちゃんにピアノをひいていると…
「あら?ふしぎね。ピアノのおと、きょうはきこえてこないわ」
「おばあちゃん、どうしたの?ピアノ、いつもどおりきこえているよ」
 おばあちゃんはふしぎそうにたずねました。
「あら、いちごちゃん、おくちをパクパクさせちゃって、どうしたの?」
 おばあちゃんのようすがおかしい!
 いちごちゃんのおとうさんとおかあさんは、おばあちゃんをおいしゃさんにみてもらいました。
「ざんねんですが、おばあちゃんはみみのびょうきです。もうきっと、おとはきこえないでしょう」そう、おいしゃさんにつげられて、いちごちゃんとおとうさんとおかあさんはとてもかなしみました。
 とくにいちごちゃんは、あふれてくるなみだで、めがとけてながれてしまうんじゃないかというほどなきました。
「なかないで、いちごちゃん。おばあちゃんはあなたのえがおがだいすきよ」
おばあちゃんは、いちごちゃんをぎゅっとだきしめてくれました。おばあちゃんのうでのなかはあたたかくて、みみがきこえていたころとなにもかわりませんでした。
「おばあちゃん、きっとまた、わたしのピアノをきいてね」
 いちごちゃんは、きめました。
 いつかまた、おばあちゃんのみみがきこえるようになるとしんじて、ピアノをもっともっとがんばろうって。

 つきひがすぎ、ちいさかったいちごちゃんは、おとなになりました。
 そしていまでは、てんさいピアニストとしてせかいじゅうでコンサートをひらいています。
 きょうもコンサートです。たくさんのおきゃくさんが、いちごちゃんのすばらしいえんそうにかんどうしました。えんそうのさいごには、みんなたちあがってはくしゅしました。
 なみだをながしているひともいます。
 いちごちゃんは、おきゃくさんにおじぎをしました。
 コンサートがおわると、いちごちゃんは、おきゃくさんとしてきてくれていたおばあちゃんのところにはしっていきました。
 おばあちゃんは、いまでもみみがきこえません。
 でも、えがおで、いちごちゃんにいいました。
「すばらしいえんそうだったわね。みんなかんどうしていたわ。みんないつまでもいつまでもはくしゅしていたわ。そのようすをみていたら、おばあちゃんにもきこえてくるようだった。わかったの。 いちごちゃんのピアノはせかいいちすばらしいって」
 それをきいて、いちごちゃんはこどもにもどったみたいに、おばあちゃんにだきつきました。
 おばあちゃんは、とてもあたたかでした。


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