第1話

文字数 286文字

 バンドを始めたころは、ギターの弦が六本あるのがうらやましかった。ベースはただでさえ音が低いのに、弦が四本しかない。だからギターみたいに派手な演奏はとてもできない。
 でも今となっては、ベース担当になって良かったと思っている。弦が六本もあったら、鳴ってほしくない弦も鳴らしてしまう。ギターは余計な音を出さないようにするのが難しいのだと、ギターを三年で辞めた兄が言っていた。
 ベースは良い楽器だ。その音は強く、それでいて膨らみがある。基本的に和音は鳴らさない。一本の弦を弾くと、一つの音が鳴る。単調な音の繰り返しがリズムを作り、音楽の土台となる。そういうところが好きになった。
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