第2話 孤独 週末 加速

文字数 828文字

バックミラーに何台ものバイクが迫ってくるのが映った。私の車に手をあけて合図をしながら颯爽と追い越してゆく。
いつもの独り孤独な週末のドライブの途中でのよくある光景だった。それにしても、随分と一人というものに慣れてきた。妻と別々の道を歩む選択をしてからどれくらいの時間が過ぎただろうか?もう、寂しいと感じる感覚は殆どなくなっていることにも気がついていた。

私は孤独という言葉自体があまり好きではない。仲間がいる何かに所属している側から見て、独りでいることを見下した言葉であるような気がしてならないからだった。
「遅かれ早かれ皆一人だよ」と、ぼそっと一言つまらない結論を口にしていた。
群れの中での立ち位置を常に気にすることにうんざりして、つまらない時間を共有するくらいなら、一人でいることのほうがどれだけ有意義なことか。今は単純にそう思っている。そういう私のような考えの一匹オオカミタイプは決して少なくないと思う。
「傷つくのが怖いんだろ!」と窓から入る風の音がそう言い放ったような気がした。
とっさに、「自分を守って何が悪い!」と、思わず言葉にしていた。

父が生前、「最後の敵は自分だぞ」と、よく口にしていたことを思い出すと、不思議な理屈が頭に浮かんだ。常にもう一人の自分と戦っているのならば、独りとは決して孤独ではないではないか?
屁理屈かとも思えたが、この捉え方は私の自由だとそう考えた。
二十歳やそこらの時は、理由もわからず、強迫観念に取り憑かれたように毎日焦っていたのを覚えている。
年齢を重ねてきて、なるようにしかならないという本当の意味がわかってからなのか、焦ることも少なくなり前向きに諦めることがてきるようにもなっていた。
車は薄暗いトンネルの中に入っていくと、窓から入ってくる風がヒンヤリとした冷たい風に変わっていた。先を急いでいるわけではなかったが、明るいトンネルの出口を目指して、無意識にアクセルを踏み込み車を加速させている自分がそこにいた。

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