きょうきうた ぜろからきゅうじゅうきゅうまで

文字数 3,260文字

狂っても狂っても狂いき
れぬ俺
醒めても醒めても醒めき
れぬ神


蜜蜂のいなくなった世界でブンブンと羽音を立てるものはなに?


生焼けみたいな食パンを
こんがりキツネ色に焼き直して
ひたすらそればかり食す


夢から覚めて家を出る
横断歩道に靴が片方だけ落ちている


マンガに読みふけり
ふと顔を上げると世界が滅んでいた
そのまままたマンガに読みふける


とある地方都市にケーブルテレビ局ができ
とある少年にセンスオブナンセンスの扉が開かれた


アルパカの冷凍肉買いに業務スーパーへゆこう


毎朝毎朝
目覚まし時計が鳴る25秒前に目覚めるのはなぜ?


地獄の底でマッドサイエンティストたちが
蜘蛛の糸の強度について議論している


世界には甘いレモンもあるのだよ
とトリビアをひけらかす木曜日


どうなってるんだ?
どこまでもどこまでも鬼がついてくる
いっそ家に連れて帰ろう


はじめにことばがあった
ということばではじまっていることば
をはじめよう


「わたしは象を書くために動物園へ見に行くようなことはしません」

まど・みちおは言った


二十歳が人生の一番美しい年齢だと
そもそも誰も
言ってない


宝石と隕石のどっちを買うか
に悩んでいるんです


三年寝太郎が僕の少年時代の憧れでした
三つ子の魂百まで


やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずやスマホ打つ君


酒断ちてかえって頭ふらふらす
だって
風はいつも吹いている


貔貅といっしょに寝正月


数年前に衝動買いしたユーカリの木の生命力に
いまごろになって気付く


今どき短歌詠む奴を馬鹿にしてた俺が
短歌詠む木曜日


嘘八百並べられる才能
嘘からまことを出す才能


音信不通になったのは中村君で500人目だ
次は誰?
俺か?


スリランカの紅茶で一服しよう
なんせ今日は大安凶日


うえからよんでもしたからよんでも
みなみはみなみ
みなみなおなじ


ティッシュペーパーの無駄遣いを反省す
ちり紙も積もれば山となる


絹ごし豆腐買う女とは金輪際結婚するまい
と誓う木曜日


カルマを燃やせ
カルマを燃やせ
カルマを燃やせ
BURN YOUR KARMA
BURN MY KARMA


来る日も来る日も夢ばかりみていた
たわいない夢を


祭りはそのうち終わる
死んだ金魚たちを煮て食べる


生まれてからこの方
踊れたことがない
まともに踊れたことがない


赤い夕陽に照らされて
ほんの一瞬だけ立ち直る犬


白昼堂々黒猫が
俺の人生を横切って
ゆく


一人ずつ減っていくのはもちろん怖いが
一人ずつ増えていくのもなんか怖い


色んな糸を持っているのに
針は1本しか持っていない


位置について用意ドンするその位置について
考え出したらスタートできない


死屍累々
本当のヒーローにはインタビューできない
合掌


無職になって
通勤手段は馬
と履歴書に記入する木曜日


なんでやねんという言葉を使えるようになったのは何才?
漫才
なんでやねん


博多に着いたはいいが
泊まるホテルがない


この道にはいい加減飽き飽きしてるから
逃亡犯になったつもりで
歩いてみる


橋があまりに長くて泣きたくなる
帰りもまたここを渡るなんて


とりあえず太陽だけ
は信じている


支持率45パーセントと報じるメディアの信憑性は
何パーセント


おじいさんに公園の草の食べ方を教えてもらったよ
たんぽぽでパーティーをしよう


隕石が頭に命中したけれど
命に別条なし
じょうぶな帽子をかぶっていたもんね


捨てたはずの思い出がちゃんと戻ってきている


妖精はみな美しいがその美しさは千差万別である


発狂した飼い猫は発狂したままにしておけ
どうせそのうちすべての飼い猫が発狂する
そして人間も


パイナップルはアップルであるか
という疑問は常に残る


河馬は馬であるか
海豚は豚であるか
という疑問が常に伏在している


じゃがいもを地のリンゴと呼ぶ人もいる
けっこうたくさんいる


吹けば飛ぶような哀しみを
僕はいつまでもいつまでも
吹き飛ばせないでいる


若者の感性なぞ全否定する
それでもなおしぶとく消されきってしまわぬごくわずかなものだけ
をかろうじて信じる


初恋の人の名前は花園さんでした


今日は海底に潜むヒラメのまねをしていたら日が暮れた
明日はカレイかヒトデのまねをしよう


拾った箸をまた落とし
我ながら呆れ返っている木曜日


かっこいいギターを買いに出かけたのに
なんか恥ずかしくてウクレレを買って帰る


この坂を上りあの坂を下れば
ファドが聞こえてくるだろう


基本的に同じ花屋でしか買わない
ということにしている


知らず識らずのうちに3時間後同じ地点に戻ってきてしまう
という過ちを
今日は既に3回も繰り返している


久しぶりに目を開けてみようと思ったら
目が開かなくなっていた


これは大事なものだからと思って特別な場所にしまうと
あとで見つからなくなることが
きわめて多い


抱きしめようとしたら
別人であることに気付く
38ミリ手前で


抱きしめてくれるのかと思ったらそうじゃなかった
刺された
愛欲


兎と亀
どちらがおいしいかと考えている


玉子炒飯には玉子しか入れない


いつもまにか組み替えられている
生き物たちの遺伝子も
電気回路の知能も
あなた自身も


これまでの人生をランダム再生すれば恥ずかしいことばかり出てくるだろう


常識しか知らないのは困るが
常識をぜんぜん知らないというのも困る
という常識


近未来に飽きたら
おやつを買って遠未来に遠征しよう


雑魚と雑魚が仲良し
だとは限らない


いつまで経ってもブドウの食べ方が上達しない木曜日


昔は空がもっと広くて青くて
からっぽだった


地下鉄は正式名称か略称か
ふと思案するのは木曜日


図柄をちゃんと説明できないので
忘れ物の傘を返してもらえない


ミイラ取りがミイラになったそのミイラを
取りに行った人もまた
ミイラに
なる


案外天使のことはほとんどなにも知らない


愚図の大忙しで無駄なことばかりしている
だいいちこんなことを書いてることがそもそもじつに無駄だ


そもそもこの人は携帯電話を携帯する習慣が
皆無


昨夜死んだ僕が5秒だけ生き返って 
蛍光灯をじっと
見つめている


カラスが飛びまわっているから
なかなか安心して昇天できぬ


最近語彙がとみに減少
もはや
あと
ああと
あああ
しかない


空気の味が毎日違うような気がしてきた
もうなにも食う必要はない


赤でもなく白でもなくロゼ
という選択肢もあると誰かがささやく
黄昏時


コロッケだけは肉屋で買いたい
木曜日


バラがバラバラになって散っている
くわばらくわば



換骨奪胎される街で俺もまた換骨奪胎される


ここもだめならもはや海にしか行き場がない


たとえ季節が逆回りしてもこれまでと大差ないのかもしれん


まっさらな皿


まっくろな苦労


もはやガラスを割る力も意志もなくなってしまったね
俺もお前も


最近また身長が伸び始めたが
体重は減ってゆく


木曜日が永久に続く地獄にいつ
足を踏み入れてしまったのかわからない木曜日


では
毎日が日曜であったら天国かというとそんな簡単な話でもない


一生に一度くらいはジャングルをさまよってみたい
1時間だけ


連休中は誰にも会わなかったので
自分が毒虫になってしまったことにぜんぜん
気付かなかった


哀しみで胸が潰れたら
笑って膨らます練習をする
腹をいかに愉快に破裂させるか


生きても生きても生きき
れぬ俺
死んでも死んでも死にき
れぬ神
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