恐怖の催眠アプリ version.3

文字数 1,028文字

「ええ、廊下ですれ違った男の子がスマホの画面を私に向けたら……突然、その子が怪物に見えたんです……。そして、誰かの声が聞こえたような気がして……」
「どう云う声ですか?」
「男か女かも判りません……。あと齢も……。ただ、何故か信頼出来る誰かの声のような気がしたんです……」
「で……その声は何と言ってました?」
「『逃げる事は出来ない。だが、勇気を持って立ち向かえば生き延びる事が出来るだろう』って……。そしたら、何故か、体中に力が湧いてきて……」
 同じ学校の男子を素手で惨殺したその高校生女子は、過剰反応……俗に言う「火事場の馬鹿力」……のせいで、自分の筋肉や靭帯や骨にも重大な損傷を負い、逮捕直後に警察病院に入院する事になった。
 なお、尿検査・血液検査では、今の所、既知の違法薬物は検出されていない。
 念の為に、精神鑑定にかけられる予定である。

 「裏」のアプリストアでダウンロードした「催眠アプリ」がバージョンアップされた。
 通知を見ると、新機能の中に「催眠の上書きの防止」と云うのが有った。
 なるほど、これを使ってる人は結構居る訳か……。
 新バージョンが出た翌日の放課後に、ボクは「催眠アプリ」で支配している同級生の女の子(もちろん、本人は気付いていない)に「催眠の上書き防止」の催眠をかけ……。

 本当に有ったのか……。
 噂に聞いた「裏」のアプリストアも……そして、「催眠アプリ」も……。
 俺は、その「催眠アプリ」をダウンロードした。
 数日後……運良く、放課後の人気の無い時間帯に、たまたま、同じ学年の「理数系コース一番の美少女」と言われてる女の子と、廊下ですれ違った。
「あの……何か落さなかった?」
「えっ?」
 「美少女」の定評そのものの顔が、俺の方を向いた。俺は「催眠アプリ」の画面を彼女に向け……。

 ボクが彼女に「催眠の上書き防止」の催眠をかけて、そして彼女が下校する間に……何かが起きたらしい。
 彼女は……同じ学年の文系コースの……あまり評判の良くない(ボクも人の事は言えた義理じゃないが)男の子を素手で惨殺して……警察に逮捕された……らしい。
 少なくとも、その日の放課後、ボクが下校しない内に、何台ものパトカーが学校にやって来て……そして、翌日から彼女は学校に来なくなった。
 どうなってるんだ?
 まさか、ボクのせいで人1人死んだと言うのか?
 一体「催眠の上書き防止」って、何をやるモノだったんだ?
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