アイスクリームワゴン

文字数 2,272文字


 ある あつい、なつのひの ことです。
「まき」と いう おんなの()が おさんぽを していると、かわいい〈ておしぐるま〉が ありました。
「なんだろう?」
 ふしぎにおもって、ちかよって みると、あまい においが します。
 まきは、なかを のぞいてみました。しかくい はこが、きれいに ならんでいます。
 はこのなかには、それぞれ ちがう いろの 

が、(はい)っています。
 かおを ちかづけると、ほっぺたが ひんやりしました。

「いらっしゃいませ。アイスクリームワゴンへ ようこそ」
〈ておしぐるま〉の そばには、おねえさんがいました。おねえさんは、「このワゴンで アイスクリームやさんを ひらいているの」と たのしそうに いいました。
「それじゃあ、この しかくいのは アイスクリームなの?」
「そうよ。この おおきな スプーン で まるく すくって、コーンか カップの (うえ)に のせるのよ」
 おねえさんは、しんせつに おしえてくれました。
「この ももいろのは、いちごあじで、そっちは もも と、スイカよ」
おねえさんは、ちいさな スプーンで、もも のアイスクリームを すうくと、まきに あじみ をさせて くれました。

「つめたくって あまくって、とっても おいし~い!」
「あなたは わたしの はじめての おきゃくさんよ。きねんに ただで アイスクリームを プレゼント するわ」
「おねえさん、ありがとう!」
 まきは もも あじを ちゅうもんしました。
 おねえさんは おすすめの あじの アイスクリームを、おまけに もう ひとつ つけて くれるというので、まきは バニラ あじに しました。

「じつは、きょう はじめて おみせを ひらいたの。ぜんぶ うれると いいけれど……」
 おねえさんは どきどき して いる みたい。まきは じしん を もって いいました。
「この アイスクリームなら、とっても おいしいから だいじょうぶ!」
 まきの ことば に ゆうきが でて きて、おねえさんは、にっこり えがおに なりました。

「さあ、コーンと カップの どちらに しますか?」
「コーンが いいな。だって ぜんぶ たべられる から」
「コーンは たべられる けれど、じかん が たつと、やわらかく なって くずれて しまうのよ」
 おねえさんは、しんぱいそうに いいました。
「カップは たべられない けれど、くずれる しんぱいが ないから、カップに したほうが いいんじゃ ないかしら?」
 おねえさんは まきが こども なので、アイスクリームを ふたつ も たべる と、じかん が かかる と おもって いるようです。
 けれど、まきは、アイスクリームの コーンも アイスクリームと おなじくらい だいすきなので ここは ゆずれません。
「だいじょうぶ!」と いいました。

 おねえさんは まきが えらんだ もも の アイスクリームを、おおきな スプーンで

に くるくる すくい はじめました。
 アイスクリームは、みるみる まあるく なって いきます。
 こんがり やけた コーンに まるめた アイスクリームを ふたつ。ポン、ポン、と のせます。
 それから かざりに、さとうで できた おほしさまや、いろとりどりの たべられる おはなを アイスクリームに ふりかけて いきます。
 しあげに ちいさな ハートの スプーンを さしたら、()だん アイスクリームの できあがり!
「どうぞ、めしあがれ」

 おねえさんの アイスクリームを のせた〈ておしぐるま〉の よこに、イスが あります。まきは そこに すわって たべることに しました。
「うーん、つめたくって おいしい!」
 アイスクリームは だんだんと やわらかく なってきました。おねえさんの しんぱい した とおり、アイスクリームは もう とけはじめたのです。

「たいへん! いそがなくっちゃ!」
 まきは おおいそぎで たべます。こぼさないように たべるのに、ちいさな スプーンが やくに たちそうです。

 まきが あんまり むちゅうで アイスクリームを たべているので、とおりかかった ひとたちは、おもわず じぶんも アイスクリームが たべたく なりました。
「ぼくにも ください」
「わたしにも」
 みるみる ぎょうれつが できて いきます。

「ふう! おいしかった!」
 まきは アイスクリームを ぜんぶ じょうずに たべおわりました。
 みると、ながい ぎょうれつが できているので、おどろきました。 アイスクリームやさんは だいにんきです。

 おねえさんは ワゴンの なかを すっかり からっぽに して、うれしそうに まきの ところへ おれいを いいに きました。
「おかげで ぜんぶ うれたわ。どうも ありがとう!」
 まきは いっしょうけんめい たべていた だけ なので、おれいを いわれても ぴんと きません。
 けれど、おねえさんが ほんとうに うれしそうに わらって いるので、だんだんと うれしく なってきました。
「つぎの なつも また ここに くるから、きょうの おれいに アイスクリームを ごちそうするわ。らいねんも あいましょう」

 おねえさんは からっぽに なった かわいい〈ておしぐるま〉を ひいて かえって いきます。
 まきは、おねえさんに「さようなら」と いって ()をふりました。
「はやく つぎの なつが こない かなあ」
 まきは、こんどは なに あじを たべようか、いまから たのしみに かんがえるの でした。

   おしまい。


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