第1話

文字数 957文字

私のトンカツには沢山の思い出が詰まっている。何故唐突にトンカツの話が出てきたのか、もしかしてこれを書いた人はタグを間違えたのでは無いか、と心配される前に説明しよう。トンカツとは私の聖書の名前だ。
私がトンカツと出会ったのは中学一年生である。キリスト教系の学校の為1人1冊聖書を買うことになり、ピカピカの制服とピカピカの聖書で入学式に参加したことを昨日の事の様に覚えている。私はこの聖書をその時無性に食べたかったトンカツと名付けた。
トンカツは礼拝や聖書の授業中以外でも大活躍であった…主に枕として。もちろん今はしてません許してください若気の至りなんです本当です。という冗談はさておき、本題の私とトンカツの思い出を語りたいと思う。
学校で年に1〜3回ほど行われる生徒礼拝や、文化祭で宗教委員の部屋に飾る用のお気に入りの聖句。宿題終わるの?と聞いてくる母上の声。これらすべてマタイによる福音書6章34節だけで乗り切った。折れ目のついたこのページは栞を挟んでいなくても一瞬で開くことが出来るようになっている。これからもこの聖書箇所を胸に適当に生きて行こうと思う。
悲しい思い出として、礼拝中に急いでページをめくった時、聖書のあの薄い紙で切ってしまった人差し指の痛みと残った血の跡。正直その後1時間は涙目だった。
他にも現代文のビブリオバトルの授業で学年で唯一聖書を紹介したおそらく高校1年だか2年だかの時。緊張の手汗でトンカツは湿気っていた。湿気たトンカツなど実に不味そうである。
また、キリスト教系の学校に通っている人ならあるあるだと思うが、テスト期間中に聖書をロッカーにしまい忘れた事に気がつき、カンニングと言われないかと青ざめた回数は両手じゃ足りない。
ここまで書いてて思ったがいい思い出が全然ないと感じた。
まぁいいだろう。
そんな私は今年の3月に卒業を迎える。6年間使った為ぐちゃぐちゃになった式典用の白いスカーフ、身長が伸びた為短くなったスカート。そしてボロボロになった聖書。きっと入学式とは真逆の状態になるのだろう。学校での毎朝の礼拝が無くなるとすると、卒業した後聖書を開くことは一気に少なくなるだろう。しかし安心して欲しい、大学もキリスト教系だ(合格する事ができれば…)。トンカツとはこれから先も長い付き合いになるだろう。
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