第1話

文字数 821文字

ボクはキミのことを守る。
だから、いつもキミに触れている。

キミに悪さをしようとするヤツを、ボクは近づけたりしない。
そんなヤツ、絶対に許さないんだ。

キミとボクが片時も離れない日々は、もう半年以上続いている。
たぶん、これからもこういう関係が続くんじゃないかな?

こんなことをボクの方から言うのは卑怯かもしれないけれど……どうやら、ボクとキミが一緒にいることを世間は望ましいと思っているんだ。

でも、今日は正直に言うよ。
キミは、ボクのことをどう思っているのかな?
どこに行くにもついてくるボクを、鬱陶しいと思っていたりするのかな?

もしかして、周りのミンナの声を気にして、キミ自身は望んでないのにボクと一緒にいるのかな?

……ごめん。やっぱり怖いから、答えは聞きたくない。
突然ボクの方から話を持ちかけたのにごめんね。

謝りついでに、もうひとつだけ、ボクがキミに対して申し訳なく思っていることを言うね。
ボクがキミを守る役目を果たしている間、キミの笑顔は消えてしまっている。
それもこれも、ボクが悪いヤツらからキミを守るため、キミの前で構えているからだ。

キミは笑うと本当にステキなのに。
そうだ。世界中の人達に、キミの笑顔を見せてあげたい。

本当なら、ボクがキミを守る仕事がずっと続くことなんて、起こらない方がいいに決まってるんだ。
 
ごめん。ちょっと重たい話になったね。そして今日は、謝ってばかりだね。

でも、こんなボクも近頃、キミのために今までしたことがない努力をしている。
どうだろう? ここ最近はボクだってオシャレに気を使ってるんだよ?
ステキな服で身を包んだ君と歩くのに、相応しいようにね。

さあ、明日もまた一緒に出かけようか。だから今日は、もう寝よう。
キミの好きな画家の絵が見られるあの美術展、予約したんだもんね。

美術展に行くまでの間も、美術館の中でも、ボクはいつも通りキミを守るよ。
ほら、キミを迎える美術館もこう言っている。
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