第7話 きみの裸になんか微塵の興味もない

文字数 1,109文字

 スカンピンは言いつけを守り、白黒のツートンカラーに毛を染め、やってきた。
「なんだか、パンダっていうより、出来損ないのアライグマみたいだけど、まっ、いいわ」
「実は今日は、きみにプレゼントを持って来たんだよ」
 スカンピンが紙袋を自慢げに見せた。
「ぼくらが変身したんだから、きみもと思ってね」
 袋から取り出されたのは、女子力満点の、ピンク色のひらひらミニドレスだった。
「あたしに、これを着て悪と戦えっつーの?」
「そうだよ。女の子はこういうの、好きだろう」
「魔法少女じゃねーんだよ。バカか? これ着て屁ぶっこいて空飛ぶんだぞ。似合うわけねーだろうが」
「じゃあ、どういうのがいいんだい? スーパーガール? それともワンダーウーマン?」
 ああ、どうしてスーパーガールやワンダーウーマンが持っているような能力ではなく、屁力なんかをあたしに授けたんですか? 神様・・・・・・。
「どっちも却下。全身黒タイツでいい。目も鼻も口も完全に隠れるような」
「本当にそれでいいんなら、準備するけど」
「お願い」

 三日後、スカンピンは全身黒タイツを持って再び現れた。
「じゃあ着替えるから、向こう行ってて」
「ぼくはスカンクなんだから、気にすることはないよ、優菜。きみの裸なんかに微塵の興味もないから」
「いいから、表で待ってろっつってんだよ!」
 スカンピンが出ていくと、下着姿になり、タイツを身につけてみた。タイツは思っていたより伸縮性があり、穿きやすい。顔面をすべて覆うマスクは、通気性抜群で息苦しさはまったく感じなかった。
「なかなかいいじゃないこれ」
 ドレッサーに全身を映し、優菜は呟いた。
「でも、ダイエットしなきゃな。ちょっとここ、ヤバいし」
 横になってみると、下腹がせり出だしているのが分かる。
「正体を隠すための全身タイツなんだから、下腹ポッコリなんて気にしなくてもいいんじゃないのかい」
 いつの間にやら部屋の隅にスカンピンがいた。
「ノックして入って来てよ! いつからそこにいたんだよ!?」
「さて、準備が整ったから少し練習をしよう」
 いつものことながら、人の言うことなどまるで聞いていないスカンピンが、ジャンプして窓から裏庭に降りた。仕方なく優菜もついて行った。辺りは既に夕闇に包まれていた。
「人気のない広いところに行こう」
 優菜とスカンピンは、森の奥にある原っぱまでひとっ飛びした。
 原っぱにはすでに、スカンピンの仲間たちが集結していた。みな律義に言いつけを守り、パンダ風の毛染めをしている。
「今日は、コスチュームも決まったことだし、本格的な戦闘訓練をしてみたいと思う」
「戦闘訓練って、何するの?」
 マスクを取った優菜が、不安気に眉根を寄せた。

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