家電寄席

文字数 394文字

 繁盛亭という寄席に来ていた。
 《本日家電寄席》とある。

 電子亭レンジの落語で会場が温まったところで、次の高座に現れたのは、冷やし家クーラーだった。

「お暑いなか、ようこそいらっしゃいました。ちょっと冷んやりする怪談をひとつ。私がこの寄席に来たときの話でございます。この会館の階段から、転げ落ちましてぇ、肝が冷んやりいたしました」

 会場は冷んやりして、クーラーは、焦ったのか、汗だくになって、落語『青菜』を始めた。

 ところが、調子がおかしい。肝心なところでトチる。汗が止まらずバタンと倒れた。

 あわてて、舞台袖から電子亭レンジが来た。

「おいおいクーラー、コンセント抜けてんじゃねーか」

「頭がクーラークラする助けて〜」

 コンセントを入れると、再び涼しい顔して落語を続けた。

 あまりウケるので、ヒートアップしてなかなかオチまでいかない。

 すると、突然停電になった。

 落語より、電気が先にオチた。
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