絶望と天才

文字数 3,770文字

粉塵の中から姿を表した巨大ロボット見た目は他のタイプMと、少し似ているが、より凶暴性を帯びたデザインとなっている。

「あー。マイクテスト、マイクテスト。」

巨体ロボットのバイザー周辺からマイクを使った人の声がする。

「な、なんだなんだ。人が乗っているのか? …操縦者?」
困惑する冒険者たち。

「えー。どうも。ワシです。予定ではここに来ることは無かったのですが…。
なんでも君たちがワシが送り込んだタイプMたちを全滅寸前まで追い込んだとか…。

……ぶち殺すぞ、ド低脳虫ケラ共。ワシのせっかくの計画を邪魔しおってからに。」

さらにマイクで語りかける開発者と思しき人物。さらにざわめく冒険者たち。

「開発者か……?」
「復讐に来たのか?」
「……いや、それよりもなんかおかしくねーか。」
「ああ、お前も気づいたか」
「喋り方はジジ臭いのによぉ…。」
「声が……。」

冒険者たちは操縦者が伝えてくる言葉の内容より、別の方に気になっていた。

それも致し方のないこと。何故なら…

「な、何で少女のような声なんだ……?」

声質が、完全に幼き少女の声なのである!!
圧倒的ロリ声……!!!

喋り方はジジ臭いのに……声は…幼女!!!

それもそのはず!
容姿がどう見ても、圧倒的幼女……!!!

赤髪ショートの幼女……!!!

「えー。ということで、わしの計画の邪魔をした君たち愚かな冒険者たちは、タイプMの上位互換であるこの『タイプS:1号』に皆殺しにされてもらいます。」

「な、皆殺しだとぉ?」

「へっ!俺たちをあまり舐めるなよ。いくらそっちが図体がでかくてもこっちにはまだ10人以上いるんだ!袋にしてやるぜ!」

「そーだ!そーだ!」

操縦者の脅しに動じない冒険者たち。

「袋にしてやる?ふはは。この巨体が入る袋があるなら見てみたいものだね。」

揚げ足を取り煽る操縦者。

「お前ら、やっちまえー!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

カイネたち以外の冒険者たちが次々とタイプSに突っ込んで行く。

「はあ…、何故こんなにも馬鹿なのだ。だから人間は嫌なのだ。………死ね。」

操縦者が、額部分のコックピットの中に入り、何かのスイッチを押す。

バイザーからレーザーが発射され、一瞬何か甲高い音がしたかと思うと、レーザーに当てられた場所は大爆発を起こした。

もちろん突っ込んでいった冒険者たちは全滅。後には抉られた大地と冒険者たちの骸が転がっていた。

「………………!!」

その光景を見ていた者はみな戦慄し、誰も声を出すことができなかった。

沈黙を破ったのは突っ込むのが一足遅れて助かった冒険者たち。

「あ、ああ、ああああああああああ……。何だよ、何なんだよおお……。」

次々とよろめきながらも逃げる。

「ふははははは!!やっぱワシは天才じゃー!!一撃でこの威力!!モンスター共を倒すにはこの圧倒的力が必要なのじゃ!」

高笑いする操縦者。





「ど、どうするカイネ……。」

パコが絶望が濃く混じった声でカイネに作戦を乞う。

「どうするも何も…。こんなの下級冒険者の僕たちにどうこうできるレベルの敵ではないだろ……。転生人が帰還するまで逃げるんだよ……!!」

カイネも震えを抑えながら声を絞り出す。

「そうか、転生人か!!そうだよ!あいつらのチートって力の前には敵はいねえ!!!」
声に生気を取り戻すパコ。

「そうとなりゃ早速……。」

一人で走り出したパコ。

「お、おい待てパコ!!そんな堂々と目立つ動きをすれば、敵に追撃されるぞ!」

パコを呼び止めようとするカイネ。

しかし、パコは止まらない。

「無駄だよ。パコは自分の命が一番かわいいんだ。当然の行動さ。」

叫ぶカイネを制止するペロ。

「……お前は随分冷静だなペロ。あれをみても全く恐怖を感じないというのか。」

「死んでも神様の所に行くだけよ…。」

「…やはり腐っても神に仕える者なんだな、お前も。」

「アンタ、私はプリーストだよ。人を外道みたいに言わないで。」

と言いながら煙草に火をつけるペロ。

「煙草吸う時点で聖職者としてどうなんだよ。。。」

「それに、私はこんな巨体ロボット襲撃よりも怖いことを知ってる。」

「ああ、お前が非殺生主義となったあの事件か。」

「そ。あれほど恐ろしいことは二度と起きな…」

拡声器で呼びかける操縦者。

「まだ生き残ってる虫ケラ共に告ぐ。これで圧倒的力の差が分かっただろう?貴様ら全員を始末してもいいのだが、この地は私の領土となる町。
あまり傷つけたくない。降伏したまえ。私と私のタイプSは世界最強なのだー!
フハハハハハハ!!!」

再び降伏を求める操縦者。今更誰も抵抗しようとは思わないだろう。

「で、どうするカイネ。」

「どうもこうも、何もせん。僕たちは降伏しかないだろう。……転生人が来るまではな。クソっ。何でこんな時に限っていないんだ。町のピンチだってのに!
既に数人死んだんだぞ!
蘇生魔法を打つことはアイツに許されないだろう。蘇生魔法は死亡時刻から24時間以内じゃないと意味が無い…。
彼らは本当に死んでしまうんだ……。いや、あいつらだけじゃない、アイツの機嫌次第では僕たちだって……。頼むから早く来いよおお!!助けてくれよおおおお!!転生人!!!」

あくまで転生人のチート頼りのカイネ。


ドスッッッ

無言の腹パンをかますペロ。

「ぐあっ…!な、何を……?」

うずくまるカイネ。

「……お前は、ただのモブ冒険者Aなのかよ!?お前私らが冒険者辞めるってほざいてたとき言ったよなあ!!
『小さい頃、人物に平和をもたらす英雄になると誓っただろう!?』って。
私はその言葉と、ロボットたちとの戦いを見てやる気出したんだよっ!!
この青髪ゴミメガネッ!!だからいつまでもクソ童貞なんだよ!!死ねっ!!!
そして蘇生魔法で生き返させて300,000Gくらい請求してやるっ!!!」

カイネに罵声を飛ばすペロ。

「じゃ、じゃあ逆に聞くが、君はアイツに勝てるのかい!?」

「私がやるんじゃねーよ!カイネとパコとテンガが倒すんだよ!」

「そんな自分勝手な……。」

「私は気が変わったんだ!
ちょっくら世界でも救おうかなと思ったんだ!子供の頃の願いを思い出したんだ!」

「世界を……。」

「そのためにはあのポンコツロボットぐらい倒すさ!」

(君の心境の変化なんて知らないっつーの!)

内心文句を垂れつつも

「戦う気がないなら今すぐ去ね!クソ童貞!!」

「……童貞じゃねーし。」

「あ?何か言ったかゴミメガネ?」

「……そうだよ。僕だって立派な大人なんだよ…。やってやるよ……。」

にへら笑いをしながら立ち上がるカイネ。

「なにニヤニヤしてんのよ。」

「けしてふざけてるわけじゃないよ。ちょっとやる気になっただけさ。」

「へぇ、まあやる気になったんだな。メガネくん。」

「青髪ゴミメガネクソ童貞からメガネくんに昇給できたか……。
……僕も臆病になり過ぎたな。よし、いっちょぶっ壊すか。あのボンクラ。」

「おんやぁ?仲間割れですかぁ?流石に頭がおかしくなっちゃいましたかぁ?」

嘲笑う操縦者。

「仲間割れ?違うね!闘魂注入だよ!!見てな、私とカイネとテンガとあとパコの4人がアンタのポンコツぶっ壊すからよ!!」

「はあ?ぶっ壊す?タイプSを?おいおい馬鹿にもほどがあるぞー。
だいたい4人っつっても一人は死んでるし、一人は逃げたようじゃないか。数も把握できないのかあ?」

「いいや、4人さ。テンガはじきに蘇生魔法の効果で生き返るし、パコも連れ戻す!」

言い返すペロ。カイネも続く。

「おいおい、お前私を馬鹿呼ばわりしたな?本当に馬鹿なのはお前さ!私の名はカイネ!!お前が自分を天才と言うならば聞いたことぐらいあるだろう!!」

「お!いいぞカイネ!もっと言ってやれ!そうだ!お前は天才だー!!」

「な、カ、カイネ!?お前が!?」

(……あの『プロメテウスの生まれ変わり』とか言われとったガキか!
世界を牽引する学者への道を期待されてたにも関わらず行方を誰にも言わず消したと聞いたが、まさか冒険者になってるとは…。)

「ふん!過去の天才など今を突き進む天才のワシの足元にも及ばん!今この場で貴様の存在を消してやる!」


「………うん?どうなってんだ?町が壊されてる……?」

その時、テンガが蘇生を完了した

「いいタイミングで戻ってきたテンガ!ラブーホを破壊したのはあのでかいヤツだ!あれを今からぶっ壊す!!!」

意気揚々と説明するカイネ。

「お?おおお?よく分からんが、あいつがラブーホをめちゃくちゃにしたなら許せん!」

「一人増えたとこで変わらぬことよ!消し飛ばす!この天才技術者『ヒンヌー』の名にかけて!!」

「ヒンヌーがお前の名か!おい、ヒンヌー!お前の自慢のポンコツが鉄くずとなる様とくと目に焼き付けな!!

ただいまより反撃を開始する!!!」

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