はじめに突っ込ませて(プールの要望)
文字数 3,297文字
ミトリがわざとらしくギィィィと音を鳴らしながら開けた扉の先。
電気のついていない廊下であぐらをかきながらカップヌードル完成を待っていたのはネクラ怪人こと作者であった。
作者のスキル発動!
『地の文が多くなーる』
黙々と残り時間を数える作者からはズゥゥウウンという効果音が聞こえそうなほどのダークオーラが放たれている。
これが人見知りと寂しがりを拗らせた毎日地面を見つめる根暗のオーラなのかもしれない。
ミトリがプールに語りかける。
責任者を前にしたプールは怒りを抑えきれなくなったようだ。
最初の頃の真面目(?)な口調が跡形もない。
作者に詰め寄ろうとしたプールをミトリが抑える。
暴君プールでもさすがにチームメイトの言葉には耳を貸すようだ。
ひとつ。
関係ないことが頭をよぎったのだが、プールのセリフから『スゥ、』を抜いてみようか。
落ち着いていない。落ち着いていないぞ。
興奮してやがる……これが宇宙の獣なのか。
いいじゃん。第一話じゃないんだし。
第0話の扱いだから、この話。
寄生人の姿について作者に問おうとしたプールの目(そういえばどこにあるのだろう)が、赤い影を捕らえた。
プールの視線を追いかけて作者が首を捻るとそこには、カップヌードルを狙う赤福がいた。
ズダッ
言うが早いか。飛び出したプールは背中にいる“本体”の足で赤福を拘束する。
私は考えていた。
プールと赤福の横を通りすぎる間も、カップヌードルのふたに手をかけた瞬間も、今こうしてカップヌードルの上に割り箸を置いた時も考え、そして……。
決断した。
彼は決意した。
正直にプールに話そう、と。
しかし、この世界の神は非常に短期であった。
それこそたった一つの過ちにすら鉄槌を下すほどに。
作者が発した言葉はしかしプールの耳には届かなかった。
プールの耳に届いたのは無慈悲な神が寄越した躊躇のない使者(バカ)の暴露だったのである。
作者の制止も聞かず、ミトリは録音を再生する。
ピー、ガコン。
まじかー。やべーな。プールの奴、信じちまってるよ。
録音機から流れてきたのは、紛れもない作者当人の声である。
違うことといえば、やはり実際の会話ではなく作者の本音が録音されていることだ。
あいつだけアナログな訳って本当はただ、他のメンバーより細かくて面倒なだけなんだけどなー。
(細かいと時間かかるしー?)
プールの三点リコーダーは横一列きれいに並んでいる。
やってしまった感が凄まじいのは気のせいではないだろう。
いやさ。ほんと悪いとは思ってるよ?
でも、指が痛いんだよねー。ア○ビスだからさー。指が擦れて擦れて。
作者が弁解しようにも。既にどうにかできる段階ではなかった。
えーと、寄生人の姿の理由? そんなの思いつきに決まってるじゃない。
なんかこう頭脳派描こうとしたんよ? そしたらなんか頭脳飛び出ちゃって。
寄生人てのは後で思いついたんよ。
とんでもない暴露パレードである。
観衆からはゴミ、空き缶、腐った卵を投げられるであろうひどさである。
「頭脳が飛び出ちゃって」などとつまらないことを言う前にこの状況を事前に防げなかったのか。
バカな作者である。
プールはニコニコしたまま赤福の拘束を解いた。
(なぜニコニコしているとわかるのだろうか)
赤福の雄叫びに続いた作者の悲鳴。
想像は君たちに任せよう。
ただ一言ヒントを述べるならば、『カップヌードルの危機』だろうか。
恐らく第一話からのプールは姿が変わっているだろうが、笑顔で迎えてやってほしい。
(第0話を通してプールのグロさが思ったより酷かったので姿チェンジします)