1. 選ばれし船員達
文字数 1,617文字
2017年2月。
春を待つ寒空の下、横浜市内のとある事務所にて何人もの少年達が集まっていた。
彼らがやってきたのは、
『マリンプロダクション本社』。
君らのユニットのプロデューサーを担当する事になった『伊達 修』だ。
どうぞ宜しく。
伊達と名乗るこの男性は、
今集まっている少年達をサポートする総合プロデューサー。
彼らのユニット名は『Fan★C』。
1人1人の目を見ながら挨拶を済ませた伊達だが、目の前にいる殆どのメンバー達は表情が硬く会話も全く無い。
そんなに緊張しなくていいぞ??
今ここに居るのは、今日から共にアイドルとして活動していく仲間達だ。
厳しいオーディションを切り抜けてきた者同士、まずは打ち解ける所から初めて貰いたいな。
ここに来てようやくお互いの顔を見合わせるFan★Cの一同。
未成年のメンバーが大半なのもあるが、表情はどことなく垢抜けないイメージ。
初めに口を開いたこちらのメンバーは
黄ノ宮 結月。
ド金髪の髪の毛にヤンチャな服装。
見るからに遊び好きそうなその風貌に他のメンバーは躊躇い気味の様子だが、構わずに声を上げる。
そういえば、先程からこの黄ノ宮だけはニコニコとして緊張していなさそうな感じだ…
ねーねー君名前は??
教えて教えて!!
グループ作っちゃお!!
紫音くんって言うんだ!!
めちゃんこイイ名前♪
君は君はー??
俺、黄ノ宮結月!!
1人ずつの目を見て次々に連絡先を交換していく黄ノ宮。
さながら新学期のクラス替えのような光景だ。
自己紹介よりも先にグループチャットが出来てしまった。
見かけどおりのテンションとコミュニケーション能力であっという間に全員の連絡先を入手してしまったらしい。
まだまだ緊張してるようだから…
手始めに、皆で1つ目の仕事をこなして貰おうかな?
こんちはー!!!
Fan★Cでーす!!
よろしくお願いしまぁーーす!!!
よろしくお願いしまーーす!!!
マリンプロダクションの新人でーす!!
伊達の言った手始めの仕事。
それはズバリ、ビラ配り。
ここ数年で一気に勢い付いているマリンプロダクションのオーディションには例年多くの注目が寄せられており、
毎年の恒例としてその期の合格者が自ら街へと繰り出し、ビラを配布するという伝統行事的なものがある。
ティッシュ配りのような仕事ではあるが、毎年の新規合格者やユニット昇格者達はここで小さな第1歩を踏み出すのだ。
中々受け取ってもらえないな…
都会の人ってこういうの慣れてるからなのかなぁ。
門真さん…でしたよね!
無くなるペース早いっすね…凄い…
ティッシュ配りのバイトやった事あるけん…これくらいなら。
俺に惹かれてんじゃなくてティッシュ欲しいだけだろうけど…
神奈川県最大のターミナルである横浜駅前での初仕事。
地方在住のメンバーも多く、関東の繁華街ではただただ人の多さに圧倒されてしまうばかり。
Fan★Cでーす!!!
よろしくお願いしまーす!!
あ!!ありがとうございます!!!
一応ノルマは設定したものの、特にクリア必須という訳ではなく。
それでも少しでも好調な滑り出しを飾れるよう、一生懸命に声を上げて自分達を売り込むメンバー達に伊達も関心している様子。
マリンプロダクション、今年の新人ですー!!
どうぞ良くしてやってください
よろしくお願いします!!
よろしくお願いしまーーーす!!!!
黄ノ宮結月でーす!!
いやぁーもう23なもんで。
この中じゃ最年長なんですよー
時折声を掛けてくれる人もいる。
初めは少しかったるい気分だったメンバーも、仲間と共に一生懸命になれば自ずとやる気は出てくるもの。
僕らがFan★Cでーーす!!!
皆さんーーよろしくお願いしますーー!!!
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