光ることを知らない君は、その胸の内にロマンを隠す。
文字数 1,588文字
「……僕はね、だめな子なんだ。」
「ふ~ん?」
「綺麗じゃない。」
「でも別に汚いって訳でもないだろう?普通だよ。」
「だめなんだよ。キラキラしてなきゃ……。」
「キラキラ?」
「キラキラしてなきゃ……誰にも愛してもらえない。大事にしてもらえない……。」
「う~ん。まぁ……難しいところではあるね。人がそれを特別だと思う基準として、綺麗であることやキラキラしている事はとても明確で誰にでもわかりやすいからね。」
「……そうだね。」
「でも、本当にそれが全てだと思うのかい?」
「……?」
「確かにね、キラキラしているものは美しい。澄んだ透明度は光り輝く。他にはない光沢も素晴らしいものだと思うよ。」
「……やっぱり……僕はだめな子なんだ……。」
「でも本当に、それだけが全てだと思うかい?」
「……キラキラしてなくても大事にされる事もあるよ。でもそれはそれで特別だからだよ……。特別な要素を持っている場合だけだよ。その要素が必要とされていればキラキラしてなくても愛してもらえる……取り合うように必要としてもらえる……。」
「そうだね。たとえキラキラしてなくても、綺麗でなくても、その中にたくさんの可能性が隠されているんだよ。キラキラしている事が全てではない。目に見えてわかりやすい輝きがなくても見る人が見ればわかるんだ。」
「でも僕はそれすら持っていないんだ……。」
「……どうしてそう思うの?」
「だって……僕は特別じゃない……。」
「君は自分で言ったじゃないか?必要とされる要素があれば愛されるって。確かにキラキラと美しい事は誰にでもわかりやすく明確だ。だからたくさんの人に愛される。それでも、キラキラしていなくても、澄んでいなくても、光沢を放っていなくても、君の中には誰かに愛される何かがちゃんと隠れている。」
「……でも……誰も僕になんか見向きもしないよ……。」
「それは単に、君の中に隠されたものを誰も見つけられなかったからだよ。そしてそれを探している人にこれまで君が出会わなかっただけだ。隠された要素はね、やっぱり隠されているからとても見つけにくいんだ。それを探し求めてやまない人がいても、隠されているからなかなか見つけられないんだよ。」
「……僕を探してくれている人なんていないよ。何もないもの……。」
「本当に?」
「…………。」
「今、こうして私がいるのに?」
「……え?」
「先生!またそうやってぼんやりして!!」
作業着姿の若者が、ピクリとも動かなくなった教授を心配して走ってくる。
体調が悪いのか等確認し、大きくため息をつく。
「休むならテントに戻ってちゃんと休んで下さい。」
「ごめんごめん。石と話していたんだ。」
「またまた!そんなおとぎ話で誤魔化さないでくださいよ?!」
自分を気にかけてくれる助手に教授は正直に話したが、当然ながら信じてはもらえなかったようだ。
しかしいつもの事。
教授は気にも止めず石を撫でた。
「今回の子は随分長いこと待たせてしまったみたいでね、ちょっと可哀想なことをしてしまったよ。」
「変なこと言ってないで仕事してくださいよ。」
「はいはい。」
教授はそう言うと、腰からハンマーを取り出す。
「君は特別な子だよ……。少なくとも私にとってはね。」
そう言ってカチンとハンマーを当てた。
綺麗に割れた石の断面。
それを教授と助手が覗き込み目を輝かせる。
「教授……!!」
「うん。」
「すごい……!!」
「綺麗に残ってる……なんて美しいんだろう……。」
遠い遠い太古の記憶。
数億年もの昔の地球の軌跡。
探し求めてきたロマン。
「先生!この辺りを重点的に発掘しましょう!!」
「うん。」
助手はそう言うと小走りにキャンプに戻って行く。
それを微笑ましく見送り、教授は石に目を戻した。
「やっと見つけた……君を……。キラキラしていなくても……君は私の宝物だよ……。」
その言葉に、石は戸惑いながらも少しだけ誇らし気に笑ったように見えた。
「ふ~ん?」
「綺麗じゃない。」
「でも別に汚いって訳でもないだろう?普通だよ。」
「だめなんだよ。キラキラしてなきゃ……。」
「キラキラ?」
「キラキラしてなきゃ……誰にも愛してもらえない。大事にしてもらえない……。」
「う~ん。まぁ……難しいところではあるね。人がそれを特別だと思う基準として、綺麗であることやキラキラしている事はとても明確で誰にでもわかりやすいからね。」
「……そうだね。」
「でも、本当にそれが全てだと思うのかい?」
「……?」
「確かにね、キラキラしているものは美しい。澄んだ透明度は光り輝く。他にはない光沢も素晴らしいものだと思うよ。」
「……やっぱり……僕はだめな子なんだ……。」
「でも本当に、それだけが全てだと思うかい?」
「……キラキラしてなくても大事にされる事もあるよ。でもそれはそれで特別だからだよ……。特別な要素を持っている場合だけだよ。その要素が必要とされていればキラキラしてなくても愛してもらえる……取り合うように必要としてもらえる……。」
「そうだね。たとえキラキラしてなくても、綺麗でなくても、その中にたくさんの可能性が隠されているんだよ。キラキラしている事が全てではない。目に見えてわかりやすい輝きがなくても見る人が見ればわかるんだ。」
「でも僕はそれすら持っていないんだ……。」
「……どうしてそう思うの?」
「だって……僕は特別じゃない……。」
「君は自分で言ったじゃないか?必要とされる要素があれば愛されるって。確かにキラキラと美しい事は誰にでもわかりやすく明確だ。だからたくさんの人に愛される。それでも、キラキラしていなくても、澄んでいなくても、光沢を放っていなくても、君の中には誰かに愛される何かがちゃんと隠れている。」
「……でも……誰も僕になんか見向きもしないよ……。」
「それは単に、君の中に隠されたものを誰も見つけられなかったからだよ。そしてそれを探している人にこれまで君が出会わなかっただけだ。隠された要素はね、やっぱり隠されているからとても見つけにくいんだ。それを探し求めてやまない人がいても、隠されているからなかなか見つけられないんだよ。」
「……僕を探してくれている人なんていないよ。何もないもの……。」
「本当に?」
「…………。」
「今、こうして私がいるのに?」
「……え?」
「先生!またそうやってぼんやりして!!」
作業着姿の若者が、ピクリとも動かなくなった教授を心配して走ってくる。
体調が悪いのか等確認し、大きくため息をつく。
「休むならテントに戻ってちゃんと休んで下さい。」
「ごめんごめん。石と話していたんだ。」
「またまた!そんなおとぎ話で誤魔化さないでくださいよ?!」
自分を気にかけてくれる助手に教授は正直に話したが、当然ながら信じてはもらえなかったようだ。
しかしいつもの事。
教授は気にも止めず石を撫でた。
「今回の子は随分長いこと待たせてしまったみたいでね、ちょっと可哀想なことをしてしまったよ。」
「変なこと言ってないで仕事してくださいよ。」
「はいはい。」
教授はそう言うと、腰からハンマーを取り出す。
「君は特別な子だよ……。少なくとも私にとってはね。」
そう言ってカチンとハンマーを当てた。
綺麗に割れた石の断面。
それを教授と助手が覗き込み目を輝かせる。
「教授……!!」
「うん。」
「すごい……!!」
「綺麗に残ってる……なんて美しいんだろう……。」
遠い遠い太古の記憶。
数億年もの昔の地球の軌跡。
探し求めてきたロマン。
「先生!この辺りを重点的に発掘しましょう!!」
「うん。」
助手はそう言うと小走りにキャンプに戻って行く。
それを微笑ましく見送り、教授は石に目を戻した。
「やっと見つけた……君を……。キラキラしていなくても……君は私の宝物だよ……。」
その言葉に、石は戸惑いながらも少しだけ誇らし気に笑ったように見えた。