行き過ぎたポリコレは、もう、うんざり……

文字数 743文字

「あんたが俺の担当弁護士? そもそも、あんたみたいなのが、本当に弁護士なのか?」
 容疑者は俺を見てそう言った。
「い……いや……他に手が空いてる弁護士が居なくて……」
 自分の車に乗ろうとした被害者を自動車窃盗犯と思い込んで背後(うしろ)から銃撃して殺害し、二級殺人に問われている警官……。それが、この容疑者だ。
「で……何で、被害者を自動車窃盗犯だと思ったのですか?」
「あいつらが、あんな高級な車を持ってる訳無いと思ったんだよ。それに車種もアジア系に人気が有るヤツだったしな。服も貧乏臭かったし」
「でも、警告も無しに背後(うしろ)から撃つのは……」
他所(よそ)の町の事は知らねぇが、この町じゃ、銃を使った犯罪者の7割以上があいつらなんだよ。来世紀には、あいらの人口は3割を切るって言われてる御時世なのによぅ。お行儀良く、あいつらを取締ってたら、命がいくつ有っても足りねぇ」
「そ……そう言われますが……」
「あんた、本当は、お仲間を殺しちまった俺の弁護をやる気なんて無いだろ?」
「そ……そんな訳無いでしょう……」
「もういい、帰ってくれ。運良く弁護士になれたって、()()()の若造は、やっぱり白んぼだな……」
 私が生まれる前、「今のところ最後の白人男性大統領」は、「ポリコレには、もう、うんざり」が口癖だったようだ。
 そして、彼が二期目の任期を終えてから、三十年以上。彼の御希望どおり、この国の大半の人々も「別にポリコレに沿った言動をしなくても良い」と思うようになってしまった。
 ただし、よりにもよって、私達白人が人口でも、平均収入でも、大学進学者の割合でも、この国では3位以下の落ちぶれていくエスニック・グループになった、この今の時代に。
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