「ポエムかよwww」もしくは「俺もそう思う……けど……裁判では言うな」

文字数 795文字

♪ あの人は、私を駄目な女だと言う
♪ 俺が一緒に居てやらないといけないって
♪ 本気でそう思ってたの?
♪ あなたこそ……

「なるほど、貴方が付き合ってた、あの女性がSNSにそう書いてたのを見付けてしまった訳ですね」
「ええ……でも……その時は、怒るよりも……馬鹿馬鹿しくなって……」
「何故です……?」
「だって、あんな駄目女と付き合ってやるような優しい男は、俺ぐらいですよ」
「それで、どうしたんですか?」
「で、あいつに言ってやったんですよ……。そんなポエムをSNSに書いても、誰も見てくれねぇだろ、って……でも、あんな事になるなんて……」
「あんな事って?」
「そしたら、何故か、あいつは何かを思いついたような顔になって……」
「そして、貴方が『ポエム』と呼んだものを弾き語りしてる動画をYoutubeにUPして、それがバズって……」
「まるで悪夢でしたよ……」
「悪夢?」
「あんなポエムが大ヒットして……あいつは、とうとう、ミュージシャンとして商業デビューしてしまったんですよ……」
「ええ、私も、あの歌、あんまり好きじゃないんですよ。歌もギターも正直巧いとは思えないし。何故、ヒットしたか判らないのに、あっちこっちでBGMに使われてて……」
「そうでしょう? 酷い言い方かも知れないけど、あいつには才能が無い。だから……あいつが変な勘違いをしない内に止めないといけない、って思ったんですよ。作詞も演奏も歌も駄目なヤツが音楽業界に入るなんて、絶対に本人の為にならない」
「あの……そこまでは良いんですけど……それ、裁判の時に言わない方がいいですよ」
「何故です? 確かにやり方は間違ってたかも知れないですけど……この動機だと情状酌量とか……」
「無理、無理、無理、絶対無理」
「えっ、そうなの?」
 自分より有名になった恋人を殺した、その自称「Youtuber」は心底不思議そうな顔で担当弁護士である私の顔を凝視(みつめ)ていた。
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