第1話

文字数 473文字

JR京浜東北線の車内。
端の席に座っていると、隣の座席が一つしか空いていないからか、二人組の男性が目の前に立つ。
俯いているため声しか聞こえないが、どうやら外国の方と日本人の二人組のよう。

ピャラヒャラと音を鳴らし、大船行きの電車が品川駅を発車する。
耳を傾けているつもりはないが、前の二人の会話が届いてくる。

外国人(Aさん):品川ワ、品川区、デスカ?
日本人(Bさん):そう。品川区と港区かな。

程なくして、電車が大井町駅に着く。
Aさん:大井町ワ・・・大井町モ品川区?
Bさん:うん。確かそうだね。

大森駅に到着。
Aさん:大森ワ、大森区デショウカ?
Bさん:いや、大森は違うかな。
Aさん:ソウデスカ・・・アッ!ワカリマス!大森は蒲田区、デショー!
Bさん:いや、違うんだなー。

日本人の方は何故か、正解を教える気はさらさらないようで、外国人の方が「ウーン、ウーン」と大森~蒲田周辺の区が何か考え続けている。

何かを推測するとき、人は誰しも、既に知っている情報や似たような事柄を関連させて考える。
彼の口から、「OOTAKU」の音が発せられることは、おそらくないのだろう。
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