第1話

文字数 962文字

思春期に自分の性別上の立場を理解した日から、女として。とは何か。私は
常に考える。宗教、神話、そして社会の中で抑圧され、保護され、尊ばれ、忌み嫌われ、恐れられるこの性。それを利用する自分が賢く感じられるときもあれば、とてもみじめで、恥ずかしい気持ちになったりもする。誇りに思う時もあるし、自分で選択できなかったこの性質を恨んだときもあった。これからの未来に、この女という文字は残るのだろうか。女の定義とは何なのだろうか。生殖器の違い?染色体の違い?性格?恋する人の性?社会?ぐるぐるぐるぐる考える。もし自分が生まれながらに青色に囲まれて、ズボンを履いて、仮面ライダーを見ていたら私の性は変わったのだろうか。母が私が身に纏う性を見た目で決めつけず、放っておいたら、幼いころの私はスカートに手を伸ばしただろうか。ぐるぐる。ぐるぐる。高校時代の恋愛を思い出す。仲良しグループの女の子と、自分の好きな人について話したりしたが、実らなかった恋を。でも、本当に実らなかったのだろうか。実る必要があかったのではないか。青春の醍醐味ともいえる恋愛を味わいたくて、作っただけの‘好きな人‘という存在に過ぎなかったのではないか。私の青春をドラマチックにし、ヒロインを体験するために彼を利用していたのではないか。本当は大好きな友達と、近い感覚を味わいたくて、恋愛を自分に言い聞かせたのではないか。その友達への好きと恋と愛の違いは何か。今まで好きになった人がいただろうか。恋した人はいるのだろうか。ぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる。
今まで恋人がいなかったのは、女として魅力がないからだろうか。女としての魅力とは何だろうか。私のことを好きになる人、その人は私に恋してくれるのか。女という性に恋しているのか。私が入れ物を女から男に変えた瞬間、関係が変わってしまうのだろうか。変わるのならば、やはり、その人が恋するのは私ではなく女なのか。性を纏う、服にも、心にも。でも、それを脱いで、本当の愛があるのか確かめてみたくなる。私の本質は私のもののはずなのに、評価するのはいつだって当事者以外だ。今日も私は女を着る。神様から恐れ多くも授かったこの羽織を。かぶれても、擦れても、みすぼらしくったって。だって、それ以外のお召し物、生まれてこの方もらってませんから。誰にも。



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