異世界再転生

文字数 915文字

「今まで勇者を名乗る者達が我等に歯向かってきたが……お前は、その中でも、一番、みじめで笑える奴だな」
 そいつはボクをそう言って嘲笑っていた。
「確かに俺など魔王軍4大将軍の中でも最弱。だが、お前は、俺の一撃でこのザマだ」
「勇者様、一時撤退を……」
 仲間はそう言ってるが……ボクには答える力も残っていなかった。

 苦労して手に入れた聖剣は、あっさり叩き折られた。
 この世界最高クラスの筈の魔法の鎧も……ボロ布のように切り裂かれた。
 そして……。
「駄目です……。治癒魔法の効きが……普段の十分の一以下です」
 出血で目が霞んでいる。
 でも……もの凄い悪臭……。
 さっき受けたばかりの傷が、もう化膿しているようだ。
「ま……まずい……蛆まで湧き出してる……」
 おいおい……待ってくれ、ボクが転生したのは和製ファンタジーRPG風の世界と思ってたら、和製ファンタジーRPGの皮を被ったホラーものの世界なのか?
 ああ……そんな……。
 学校でのいじめで、階段から突き落されて死んでから半年。
 異世界転生したと思ったら……また死ぬのか……。
「仕方ありません。『勇者転生の儀式』を行ないます」
 えっ?
「勇者様。これから、貴方の魂を一度冥界へ送ります。しかし……英雄とは死の試練を乗り越えて力を得る者。もし勇者様が、冥界での試練を乗り越える事が出来れば……魔王に対抗出来る力を持つ真の勇者として復活する事が出来る筈です」
 ……わ……わかった、それしか手が無いなら……やってくれ。
「ですが、気を付けて下さい。勇者様が試練を受けるのは……冥界の中でも、最悪の場所。俗に言う『地獄』です」

 キ〜ンコ〜ン♪ カンコ〜ン♪
 えっ?
 待て、この音は……。
「おい、オタクくんさぁ、ちょっと焼きそばパンとコーヒー牛乳5人前買って来て。5分以内にな」
 ええええええ?
 そ……そ……そんな、ここは……まさか……。
「おい、何、ボ〜としてる? 早く行けよ」
「あ……あの……えっと……」
「金はお前が出せ。早く行け」
「う……うわあああ……」
「おい、5分を1秒でも遅れたら……また、階段から突き落すぞッ‼」
 そ……そ……そ……そんな……た……たしかに地獄だけど……予想してたのと違う……。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み