第1話

文字数 1,149文字

終わらないトンネル
「ありえないトンネルって何だろう」
って考えていると思いついた
それが
終わらないトンネルだった


終わらないトンネル
これをきいてみんなはどう思うだろうか
怖いかな 慎重な人間には怖いだろうね
そんな人には終わらないトンネルって言葉は
脱け出せないトンネルのように聞こえるかもしれない


終わらないトンネル
これをきいてみんなどう思うだろうか
興奮するかな ホラーが好きなら興奮するだろうね
そんな人には終わらないトンネルって言葉は
今までにない新しい恐怖を与えてくれるトンネルのように聞こえるかもしれない
福岡県にある犬鳴トンネルのように

終わらないトンネル
僕には夢のトンネルに思える
最高に楽しみ ぼくはここをバイクで突っ走る
どこまでもつづく道路をアクセルを全開にして走り続ける
僕から言わせるとトンネルはバイクの走行にとても良いから

終わらないトンネルがバイク乗りを楽しませてくれる理由はたくさんある
まずは空気抵抗が少ないと予想される
バイクは車と違って体はむき出しだ
走るスピードによって生まれる空気抵抗を直接体に受け取らなければならない
転倒したときのために長袖長ズボンを着用しているが、体温を一定にする効果は
あっても服は抵抗を弱めることはない
空気抵抗が少ないと体にかかる負荷が少なくてよりバイクの操作に熱中することができる
それに、高速飛行への恩恵がある
空気の存在は純粋にバイクのスピードに悪影響を与える
空気抵抗がなければ滞りなく
限りなく性能通りの速度で走行できる
これは乗り物を操縦したことがあるものは誰でも願うと思うが
時間も空気も体力も、交差点も無視して
ただマフラーのうなりやスロットルの開閉に集中して一直線に気が済むまで走る
そんなことができたらどんなに気持ちがいいだろう
たまにわざとギアを下げて
最高速を出したいばかりにスロットルを開けなおす
そうしてギアが高回転しているのを感じながらまたギアを一速ずつあげていく
なんて贅沢な遊びだろうか
目的は一つ
バイクと僕の境界線をなくすこと
私がバイクになり、バイクが私になるまでひた走る
終わらないトンネルを
どんな小さな一挙手一投足にもバイクが反応するまで
反対にバイクのどんなうねりにも私が応えるまで
やがて僕の世界は
アクセルと地面とマフラーの音だけになる
その中でぼくは考えるのをやめる 
いつしかバイクと一つになったぼくは
拡張された生物に進化する
人間のまま バイクのままでありながら
生物として変化する
時がたって
トンネルを走っていることも忘れるだろう
疲れて目を閉じるかもしれない
でもぼくは信じている たとえ目は見えなくとも
僕らは走れる
ガソリンは
ないと走れないけれどぼくが言いたいのはそういうことじゃない
終わらないトンネルの中で僕らは叫ぶ
「目を開けていて ガソリンよ永遠に燃えていて」



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