早退届

[創作論・評論]

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19件のファンレター

旅に出よう、僕を殺すための旅に。


*表紙はPicrewさんでつくりました。

ファンレター

『庚申御遊の宴』拝読しました!

成瀬川さん、先日はヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』とブラッドベリの『キリマンジャロ・マシーン』のご紹介をいただき、どうもありがとうございます!
成瀬川さんは以前からヘミングウェイがお好きだったんですね。『本棚は、僕を描く』では取り上げておられませんでしたが、やはり海外文学もたくさん読まれているのですね。
ブラッドベリは名前は知っていましたが、作品自体は今まで読んだことがなかったです。(萩尾望都によるコミカライズなら読みましたよ)
教えてくださった内容からすると、ブラッドベリという作家は、ヘミングウェイをとてもリスペクトしていたんですね。

そして、第463話で書かれていた黒木あるじ先生による講評記事と『庚申御遊の宴』、どちらも読ませていただきましたよ!
庚申信仰を題材としたお話で、クライマックスのおどり念仏の狂騒がすさまじく、竜燈が灯る場面が美しいと思いました。
講評にもありましたが、物語の進みが早すぎてもったいないとわたしも感じまして、文庫本1冊くらいの長さに膨らませられる題材なのではと思ったりしました。
講評で、この文量だと登場人物が多すぎるというのを指摘されていましたが、それは『庚申御遊の宴』がシリーズものの一部だからしょうがないですよね。キャラクターの名前が難しいというのは、成瀬川さんにかぎった話ではなく、日本の小説や漫画を読むといつもそう思います。(『鬼滅』もキャラの名前が難読ですよね)

ミステリと民俗学(土着の文化や宗教)の組み合わせというのは、ロマンがあって良いです。好奇心が刺激されますね!
北森鴻の「蓮丈那智」シリーズや、京極夏彦の「巷説百物語」シリーズや「京極堂」シリーズなど、学生時代によく読んでいたのを思い出しました。
こういうジャンルは、うんちくの文量とストーリーの進行のバランスが難しいですよね。わたしは「京極堂」シリーズは『塗仏の宴』の途中で挫折してしまいました……

それから、オレンジジュースの生搾り販売機! これ、おいしいしですよね!
ドバイ・メトロを利用したとき、生搾りオレンジジュース自販機が各駅にあってですね。日本でも飲めたらいいなと思って探したら、大手町駅近くのすごくわかりにくいところに設置されていたのを見つけました。水戸駅前にもあるんですね! すごい!

返信(1)

mikaさん、丁寧なレター、ありがとうございます! ブラッドベリは、『華氏451』の1966年に上映されたヴァージョンの映画がとても素晴らしく、監督はヌーベルバーグの巨匠フランソワ・トリュフォーです。読書が禁じられた(というか、〈文字〉が危険視され全面禁止された社会の)ディストピアを描いたブラッドベリの長編SF小説『華氏451度』(Fahrenheit 451)がベースになっています。ブラッドベリは〈叙情SF〉と呼ばれる繊細なタッチのSF作品も多く残しました。『キリマンジャロ・マシーン』もそのひとつです。ブラッドベリだけでなく、実はアーネスト・ヘミングウェイの〈短編小説〉は、作家を目指す者にとっては書き方の教科書で、リスペクトしていたり作家修業のお供にした作家は多いです。ヘミングウェイの短編というとビルドゥングスロマンの連作短編〈ニック・アダムス物語〉をまず思い浮かべると思うのですが、魅力はどちらかというと全体を貫くことになる客観描写の文体、いわゆる〈ハードボイルド文体〉です。これをまず学ばないと始まらないし、ヘミングウェイはお手本になる。次いで〈氷山の一角の理論〉ですね。僕もいざ自分で小説を書き始めよう、というときにちょうど新潮社から『ヘミングウェイ全短編』全三巻本が発売したので購入して、何度も何度も読み直しました。ヘミングウェイをお手本に勉強出来たことを僕も誇りに思っています。

そして、おお、ドバイ・メトロ!! ドバイは現代アートの拠点のひとつで、パトロンも多くいるし都市をあげて力を入れていて、日本のサブカルにも理解力があるイメージがあります。お金を落としてくれないとアート全般、存続が出来ないですからね。オレンジジュースの生搾り販売機、素晴らしいですよねー!!

ミステリと民俗学(土着の文化や宗教)の組み合わせ、僕も大好きで、今後も断続的にこのテーマで小説を書きたいと思っています。黒木あるじさんと夜、鍋をつつきながらしゃべっていて、あるじさんが「あれもこれもと性急に書いてしまうのもわかるんだよな。これを〈作家の貧乏性〉とおれは呼んでいる。生涯で書ける小説総量より小説のネタの方が多くてどうしようって問題だよな」と親身になっておっしゃってくれたのです。まさに、そういう問題でした。

これからも頑張っていきます!!