16歳からのアンダードッグ講座

文字数 1,998文字

はじめに


なんて息苦しい世の中だ!
君の心が、いや、君の魂がそう叫んでいないかい?
その気持ち、痛いほど分かるよ。
どいつもこいつもマウントをとることしか考えていない。
他人よりも優位に立つために平気で君を(おとし)めて、君の人としての尊厳(そんげん)を傷つける。
そんな奴らに四六時中(しろくじちゅう)囲まれて生きる君は、まさに至る所に敵兵のスナイパーが(ひそ)んでいる戦時下の市街地を丸腰で歩かされているような気分だろう。
本当、うんざりだよね。
そんな君がこの本を手にしたのは、まさに僥倖(ぎょうこう)だ。
なぜなら、この本は僕から君に贈る解放の書だからだ。
そう、君の魂はマウント社会の牢獄(ろうごく)から解き放たれるんだ。
この本を手にした超絶ラッキーな君、おめでとう!
そして、ハッピー・バースデイ!
え?
何がハッピー・バースデイだって?
おかしくなんかないさ。
この本を読んだ君は、(みにく)い芋虫がやがて美しい(ちょう)へと姿を変えるように、古い(から)を脱ぎ捨てて生まれ変わる。
つまり、人生二度目の誕生の日を迎えるんだ。
それぐらいのスペシャルな革命的体験を約束するよ。

え?
なぜ、「16歳からの」なのかって?
「13歳からの」でも、「20歳からの」でもなく?
さすが、いつも冷静沈着で何事にも注意深い君は、すぐにこの本のタイトルに引っかかったようだね。
結論から言ってしまうと、僕が「アンダードッグ」として生きる事の意義に気づいたのが、まさに16歳の時だったからだ。
当時、まだ「アンダードッグ」なんていう言葉は知らなかったけれど、今から思えば僕が高校1年生の青臭(あおくさ)若造(ガキ)だったあの時、あの瞬間、確かに僕は「アンダードッグ」になった。
そして、その後の僕の人生は180度変わったんだ。
(このドラマチックなエピソードについては本文の第一章に書いているので、せっかちな君も(あわ)てずにはやる心をおさえて待っていてほしい。余談だけれど、ハリウッドで僕の半生を描いた伝記映画の製作が進んでいる、というSNS上の匿名(とくめい)書き込みをどこかの誰かが見つけたとか見つけなかったとか……)
だから、まさに「アンダードッグ」のお手本として生き、手前味噌(てまえみそ)ながら「アンダードッグ」の第一人者として多くの人々から認知されることになった僕が、当時の自分と同じ年ごろの若者に向けて語りかけるつもりで書くために、タイトルに「16歳からの」とつけたんだ。
(これで納得してもらえたかな?)

この本には、僕がいかにして「アンダードッグ」として生きる道を見出したか、また、僕が「アンダードッグ」として生きる中で身につけた数多(あまた)のテクニックを(あま)すことなく書いている。
この本はいわば「アンダードッグ」の入門編だけれど、「アンダードッグ」のエッセンスを凝縮(ぎょうしゅく)した決定版ともいえる内容になっている。
座右(ざゆう)の書として何度も繰り返し読んで欲しい。
そして、君の家族や友人にもこの本を読むことを(すす)めてほしい。
なぜなら、この本は世界平和のための伝道(でんどう)の書でもあるからだ。
世界中の人々が「アンダードッグ」の素晴らしさを知り、自ら進んで「アンダードッグ」になる事で、いずれ僕たちが生きているうちに世界平和が実現できる。
僕はそう、信じている。
僕が途方(とほう)もない空想家、あるいはほら吹き男爵(だんしゃく)のように見えるかい?
いやいや、それは大いなる誤解だと言わせてもらうよ。
この本を読めば、僕の言っていることが決して夢物語ではない事が分かるだろう。
世界中のすべての人々が「アンダードッグ」になってしまえば、つまらない争いはこの世界からなくなる。
(映画の主題歌はジョン・レノンの「イマジン」で決まりだね!)
君が「アンダードッグ」の素晴らしさを知った時、魂という源流から泉のように()き出し、目元からあふれ出る涙を止めることはできないはずだ。
おっと、僕としたことがいささか興奮して熱くなりすぎてしまった。
くわしくは本文を読んでくれれば分かる。
そして、考えるのではなく、感じてほしい。
正真正銘(しょうしんしょうめい)の「アンダードッグ」こそが見ることができる、これまでとは違った新しい世界の姿を。
さあ、今日から君も「アンダードッグ」になろう!
そして、君のかけがえのない一度きりの人生を「アンダードッグ」として、命尽きるまで生き抜こう!
僕は君を心から歓迎している。
今日から君は僕の仲間だ。
ようこそ!
「アンダードッグ」の世界へ!



……なんていう書き出しで始まる本を、16歳を迎えた朝に父親から誕生日プレゼントとして渡されたらどうする?
「16歳からの起業家講座」や「16歳からの哲学入門」なんていう本じゃなく。
百歩(ゆず)って「16歳から始めるボディビルのかけ声」なんていうネタ本でもなく。
オレはすぐに()てたね。
その場で窓を開けて思いっきり外にぶん投げたい気分だったけれど、コンプライアンスは大切だから、自治体が定める適正な方法に従ってきちんと処分したよ。
そして、この事がきっかけになってオレは16歳の時に高校を中退し、親元を離れてアメリカへと留学したんだ。


おわり
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