一文小説集「川」等五篇

文字数 239文字

「川」

 歩いている夜道に、笹舟の自販機が増えてきて、川が近いことがわかる。



「図工」

 死なない子どもたちが、学校の図工の時間に自分たちの棺桶を作っている。



「売れない」

 その画商の男は、ずっと売れない女性の肖像画のモデルが、幼い頃に生き別れた自身の妹であることを知らない。



「運」

 運が悪かったね、と女はつぶやいて、元夫の生まれ変わりであるミニトマトを口に放り込んだ。



「かわいい」

 火葬場で焼き上がった母の台車を取り出した瞬間、「かわいい~!」と声がして、振り向くと知らない女がいる。
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