十三章 パラグラフリーディング

文字数 860文字

 未堂棟と別府は蛇崩池のそばで隠れていた。避難のおふれは犯人を誘き出す罠だった。別府は半信半疑だったが、しばらく経ち、人影があらわれる。人影は水門のくさびに火をつけようとしていた。未堂棟は合図をおくる。人影をかこんだ。人影の正体は容疑者のひとりだった。
 別府にとって、意外な犯人だった。
 犯人は暴れることがなかった。未堂棟は事件の謎を解明するために下屋敷の裏口へと移動する。佐々木が殺害された現場である。どうやって、犯人を突きとめたのか、推理をはじめる。凶器と氾濫の謎から、三答制の一と三答制の二を突きつけた。
 未堂棟はいまだに、釈然としない態度をとる犯人に対して、書院への移動を提案する。犯人がだれよりも望んだ場所だった。
 未堂棟たちは、中庭にいた容疑者と合流し、書院へと向かった。どうして犯人がふたたび、水門を破壊しようとしたのか、動機の謎が提示される。書院の地下に秘密があったのだ。隠された階段を使って、地下へとおりた。広い空間に出る。地下には余剰分の水が溜めてあった。
 大村家の大犯罪がつまびらかになる。犯人は態度を軟化させた。書院を破壊する以上のことを、未堂棟が行ったからだ。これで蛇崩町に変死体が出ることはなくなったのである。
 未堂棟は三答制の三を告げた。
 すべての殺人事件にかかわる、おおきな仕掛けだった。
 それが実行できる人物は、容疑者のなかでひとりしかいなかった。
 犯人はついに、みずからの罪を認めた。手首に縄がかけられる。連行していく九兵衛を途中でとめた。未堂棟は最後の仕事にとりかかった。未堂棟たちはもともと、つぎの水番人をきめるために蛇崩町にやってきたのである。飲み水を悪用した大村家には、まかせられなかった。
 容疑の晴れた関係者のうち、ふたりを水番人に指名する。
 ふたりは強い使命感とともに、引き受けてくれた。犯人は蛇崩町の安全が守られたことを知ると、そらに向かって慟哭した。大粒の涙を流した。未堂棟も同じように落涙する。両目はとじられた。
 未堂棟の覚醒が終わり、無月の水もまた、終わりとなる。
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