第13話 大納言の権力をフルに利用した国守

文字数 1,027文字

応天門の変の真犯人とされる親戚の大納言、伴善男が、

天皇のご寵愛を受けていることを良いことにして、

善男の権力を利用して逮捕を免れた人物がいる。

その名を伴竜男という。

1度目の事件(騒動)

竜男が紀伊守の時、国造の紀高継と対立。

理由は明らかになっていない。

(国守と国造との間の争いは日常茶飯事のことで、

たいして、話題には上らなかったのだろう。

今でいう、県知事VS市長みたいなものだ)

それを恨みに思った竜男は、

権限外の国造解任を実行に移そうとする。

ところが、その横暴な振る舞いが問題視されて、

自らが、紀伊守解任に追い込まれる。

そのまま、消えるのかと思えば‥‥

なぜか、放免となり、数年後に、

なんと、弾正少弼に任ぜられて官界復帰を果たす。

弾正=監察・治安を司る官

罪に問われて官職を追われた者が、

逆に、不正を正す立場に復活するという

前代未聞の人事が成立した。

まだ、これで終わりではなかった。

竜男は再び、地方守を任ぜられる。

おそらく、弾正の場では実力を発揮できず降ろされたのだろう。

2度目の事件(騒動)

越後守となった竜男は、部下である国書生の物部稲吉により、

官物横領の疑いをかけられて告訴される。

これに怒った竜男は、従者に物部を暗殺させる。

竜男はいったんは捕縛されるが、善男の弁護があり釈放された。

この騒動は腑に落ちないことがある。

告発した人物が、真犯人の手により亡き者とされたため、

本当に、横領があったのか否かがわからなくなった。

真相は闇に葬られてしまったことになる。

あくまでも推測ですが‥‥

紀伊の件では、国守の伴竜男よりも、国造の紀高継の方が、

地方貢献度が高く、名の知れた人物であり好かれていた。

‥紀伊の国造家は代々、日前神宮並び国懸神宮の神主を世襲している。

国弊神宮では、国家の財産ともされる神鏡が祀られている。

いわゆる官弊大社である。

一方、告発した人物である物部稲吉は、国府に勤務する官人である。

国守は、国書生の上司である。

部下が上司を告発するとどうなるか? 

よっぽど、罪が明白なものでなければ、国守の主張が通り退けられる。

そこまでして、なぜ、物部は告発したのか?

その理由が気になるところだ。

筆者は、物部稲吉は単なる国書生ではなく、

荘園主という別の顔があったのではないかと推測している。

おそらく、官物横領疑惑は相当、根深いものから来るのではないか?

ちなみに、2つの伴家に共通するのは、俘囚(元、蝦夷で捕縛された後、

朝廷に服従した人)を家臣(従者)に雇っている点だ。











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