あとがき

文字数 1,476文字

「柴犬は月で笑う」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 NOVEL DAYSでは、経済・金融ジャンルの投稿作品が非常に少ないです。だれも読んでくれないのでは…。執筆中、ずっと不安に思っていました。

 エッセイ賞の「昨今、社会情勢の激動にともない人々の考え方、生き方が激変しています」という案内文を読み、コロナショックで激変した世界で、まさに現在進行中のバブルの熱狂について書きたいと思いました。

 今年1月のゲームストップ騒動は、私にとって超ビッグニュースでした。ロビンフッダーたちの多くは、アメリカのミレニアル世代だと言われています。1980年代~90年代生まれのデジタルネイティブ世代です。
 ミレニアル世代が大学在学中か卒業の年に、リーマン・ショックから始まる世界経済危機が起こりました。BBCの調査で、現在30~39歳の世代が最も経済危機の影響を受けたことが明らかにされています。※1
 ミレニアル世代は、株式市場が大嫌いで、ウォール街を信じません。2011年に、ウォール街占拠運動(Occupy Wall Street)で、プラカードを掲げて、デモをし、座り込みをしていた若者たちです。
 2021年に入って、そんな株取引を毛嫌いしていたミレニアル世代が、一丸となって株を買い、空売り屋を打ち負かしました。
 ウォール街でいくらデモし、座り込みをしても、投資ファンドや機関投資家に何らの痛痒も与えられなかった彼らが、「敵」と同じ土俵で戦うことで、初めて一矢報いたのです。
 

 暗号通貨と言えば、巨額の暗号通貨ネム(XEM)が盗まれた、2018年のコインチェック事件で存在を知ったという方も多いでしょう。
 テレビや新聞のニュースでは、暗号通貨の負の面しか報道されません。
 数奇な犬生のかぼすちゃんが、ネット市民たちから善意を引き出した、ドージコインの寄付型コミュニティを、皆さまに知ってもらいたいです。

 5月11日からイスラエル軍によるガザ地区(パレスチナ自治区)への空爆が始まり、21日まで砲撃が続きました。
 アメリカでは今、人気の送金アプリ「ベンモ」がパレスチナ救援のための送金をブロックしたり、パレスチナ人へ人道支援物資を送るための支払い処理を拒否したりしています。ベンモは、国際的なテロ組織への送金を阻止するためのアメリカの制裁法を理由に挙げています。※2
 
 グローバル化する世界経済と言われながらも、現実には銀行や決済サービス企業が金融検閲を行っています。国営銀行や国営企業であれば、国政によって左右されるでしょう。しかし民間の銀行や企業は、本来は国家から自由であるべきです。
 ガザの人道的状況は極めて悲惨です。パレスチナへ支援金を送ろうとする人々にとって、暗号通貨は頼みの綱です。

 日本に暮らしていれば、暗号通貨がいったい何に役立つのか、ピンとこないと思います。
 もしあなたが、政情不安な国や地域に住み、銀行にお金を預けていても、ある日突然、預金封鎖されるかもしれないとしたら…?
 国家権力から切り離された完全に自由な通貨、検閲されない自由な取引を求める人々にとって、暗号通貨は必要とされているのです。

 


※1 「生まれなかった数百万人の子ども リーマン・ショック10年、ミレニアルへの影響」、2018年9月14日、BBC News Japan
※2 Venmo’s Censorship of Gaza Payments Makes Case for Neutral Platforms, May 21, 2021, CoinDesk.
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