第1話
文字数 1,266文字
中央フリーウェイ 片手で持つハ~ンドル 片手で肩を~抱いて
愛してるって 言~っても聞こえない
風が強くて
これは松任谷由実が歌う「中央フリーウェイ」の歌詞の一部である。
現実は厳しい。車の運転中にはいろいろなことが起こる。
まず、運転は私ひとりであることが多い。孤独との闘いだ。
今は昔、20数年前のある日、私は常磐自動車道を運転していた。眠気を醒ますために煙草を吸おうと思った。
当時、私は機会喫煙者で、普段は煙草がなくても平気だった。ただ、飲んで皆とワイワイやる時の煙草は美味しく、楽しかった。だからその
「悪いけど煙草、買ってきてくれないかなぁ?」
と、店の
「いいわよ、銘柄は?」
「箱、box に入っていれば何でもいいよ。」
「え~っ? ど~して?」
「煙草がくしゃくしゃになるのが嫌なんだ。」
「ふ~ん、じゃぁ、箱に入っていれば何でもいいのね。」
「そう、任すよ。」
会話が弾む。今どきは私のようなの者は機会喫煙者ではなく
胸ポケットには
右手はハンドル、空いた左手で KENT の箱から器用に煙草を一本だけ取り出す。口に咥えて煙草に火を点けた。
プハァ~~~
至福の一服。頭が冴える。と、その時、
「あチチチチッ!!」
煙草の先端の火の玉がポロっと落ちた。右の内股が熱い。
あわわわわぁぁ
思わず腰を浮かせた。これがいけなかった。一瞬、内股の所に見えた煙草の火の玉は、運転席のシートの奥の方にコロコロと転がり隠れて見えなくなった。
高速道路を運転中である。(冷静になれ、ん~~~。)幸いに今は体はどこも熱くはない。(よし、このまま行こう。)腰を浮かせたまま両手でハンドルにしがみつくようにして、パーキングエリアまでたどり着いた。
慌てて降りて運転席を見ると、運転席のシートの奥の方に一塊の灰があった。
(ふ~、よかったぁ~。)
「先生、ズボンのお尻に穴が開いていますよ。」
「ん?」
後輩に指摘された。
危機一髪、もう少しで尻に火が点くところだったのだ。
片手で持つハ~ンドル
の厳しい現実…、ふ~。さて最近は、運転中に眠気を感じた時はチョコレートを食べている。
その理由は、チョコレート効果として生活習慣病の予防に効果がある、
写真は袋入りの
高速道路のサービスエリアの売店で購入した。運転中に食べやすいように袋の底が浅く、指で容易に摘まめるようになっている。
運転中に右手はハンドル、左手で袋を開けてチョコレートを一粒摘まんだ、筈だった。
ん?
猛暑日の一晩、車中に放置してあったので、チョコレートが溶けてネチョネチョになっていた。ホント、袋の写真の通りだった。
片手で持つハ~ンドル
の厳しい現実…、ふ~。(おんだ。
(2023年9月)