第1話 春の散歩

文字数 497文字

土曜日の昼、長尾聡(ながおさとる)は在住している萌原市の野原を歩いていた。
緑の芝生にタンポポが咲き乱れ、青い空には白い雲が浮かんでいる。
小川にはさらさらと澄んだ水が流れ、オタマジャクシが泳ぎ、青い空を映していた。
太陽は暖かく、半袖のTシャツと薄手のジーンズでもまったく寒くない。

モンシロチョウがひらひらと飛んできて、何を考えたのか肩に留まった。
聡は振り返って見ようとした。
そのとき、足元の土が滑り、目の前が真っ暗になった。

次に目を覚ましたとき、モグラの穴のようなやはり暗いところにいた。
身体が小さくなったらしい、目の前にダンゴムシみたいな虫が三匹いた。
左脚をくじいたみたいで、木のかけらが葉っぱで結びつけてあった。
葉の裏には何かの樹液…痛みを鎮めているらしい。



「気がついたかね」
三匹のダンゴムシの一匹が尋ねた。年長者らしい。
「ここは」
聡は身を起こして聞いた。
「わしらダンゴムシの穴だ」
と別の一匹が答えた。
「あんたはわたしらの穴に滑りなさって、落ちてきたんだよ」
ともう一匹が説明した。
「できる限りの手当をしたが、どうかね?」
年長のダンゴムシが尋ねた。
「ええ、効いてるみたいです。ありがとうございます」
聡は言った。







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