第7話 慰め合う二人

文字数 1,790文字

マスターがカクテルをシェイクする小気味いい音が、店内に広がる





ここ bar CASCADE(かすけーど)は、jazzyな音楽が 気に触らない程の音量で流れていて、部屋のあかりは、程よく薄暗く、水のカーテンのパテーションで、水目桜の一枚板のウッディーなカウンター席と オフホワイト色のソファー席が区切られている。所々に置いてあるランプシェードのフロアライトは、裾にはフリンジがついていて、アンティークな雰囲気を作り出している。ライトの明るさは 柔らかく癒してくれる。



上から下へ流れる水が、照明によってキラキラと雫が光り、1人でふらっと来て、ただポーっとそれを見てるだけでも、癒される、気を使わなくて良いそんな店内だ。



イケメンでファンキーなそれでいて少しミステリアスな口数の少ないマスターが、作るお酒は美味しく、さらに、そこから見える夜景は、この界隈では、一番の美しい夜景だと、ホテル宿泊者はもちろんのこと、BARだけを目的に来るお客もいて、人気店だ。




ソルティドック グラスの周りに塩を縁どり、グレープフルーツジュースとウォッカのカクテルだ




ロックグラスに注ぎ、マスターが理恵子の前に提供する






「お待たせ致しました」



恵理子は明るめの髪にセミロングのウェーブのかかった髪型に、華奢なゴールドのフレームの眼鏡をかけている。



眼鏡を外して、リラックスする。
ソルティドックを一口飲む。



ホッとして、ぽーーっと一点を見つめている。





社長が亡くなって2週間が経つ。
突然の死に、社内は大騒ぎになり、ニュースでも取りだたされた。
運営をしていく次期社長を早く決めなくては、連日、株主総会が行われていた。
そんな中、江川恵理子は次期社長の有力な候補者となった。





女1人でカウンターに座っていても、さまになる。 江川恵理子は大人な、一匹狼みたいな、私の事が嫌いな人は近づかなければ良いという、潔良い、媚びないクールさがあった。





1人の男が遅れてやってきた
恵理子の隣の席に座る




マスターがおしぼりを出す
「こんばんは、柴山様」




「マスター いつもの お願いします」




「はい」




グレンフィディックソーダ割りが出てきた





「あら?今日はすこし遅かったですね」





「ごめんごめん 怒ってる?」



「怒ってないですよ。女をバーのカウンターで待たせるなんて。なかなか出来ないと思いますけど。 他の男に声かけられたら、今日は柴山さんじゃなくて、その人とお酒を飲もうと決めていました 笑」




「いや、社長が亡くなってから、経理部も てんやわんやでな、 山本社長だったから今までの契約でも通っていたんだけど、次の契約期間の内容は改正して欲しいと、業者が言ってくるから、その対応で遅くなったんだ..」




「そうなんですね
おつかれさまです..




山本社長、本当に亡くなっちゃったのが.
まだ信じられなくて..
『恵理子ちゃん、明日までにやっておいてよー、お願いね』ってあのパワフルな明るい笑顔で社長が、私に言ってきそうで、まだそんな声がしてきそうで、、」





恵理子が悲しそうな顔をする




「俺もだよ。
ついこの間まで元気だったのにな。
純子とは長い付き合いで、辛い時も嬉しい時も一緒に仕事をしてきた、、俺もまだ信じられん。。
なかなか俺もすぐには元気になれなさそうだ。
犯人はまだ見つかっていない。。
社内にいるかもしれないよな。。」





「そうですね、怖いわ。。




...柴山さん、、今夜は私の事なぐさめてくれます? わたし なんだか さみしくて、頭がおかしくなっちゃうくらい いっぱい愛してほしいの。」




「あぁ。一緒にいよう。
部屋を用意してる」



「明日私朝早いんです。朝から、社長が発案した、ほらあのフルーツシリーズの案件の会議があるんです。あれ、私が引き継ぐことになったんです。」



「あー、あのメロンなんだっけ?」



「メロンシャーベット色のワンピース です。第一弾。」



「そうそう、それな。


それじゃ、時間があまりないな。早く部屋へ行こう。」




柴山がグレンフィディックが3分の1くらい残っているが、席を立つ



「やだ、、そんな焦らなくても、、 笑
柴山さんっておかしな人ですね」



柴山は恵理子の手を握って引いて
エレベーターに向かう。

嬉しそうにうつむきながら、
柴山の少し後ろを歩く恵理子。

二人は人目につかないよう
さっと、エレベーターへ乗り込んだ。



2人はバーを後にした。





その数日後、
江川恵理子は何者かによって殺された。








つづく
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