第1話

文字数 1,461文字

 先月(2024年2月)、(山形県)庄内町町長と庄内町在住の医師との情報交換会・懇親会があった。地域医療を維持、発展させるために、地元の医師たちが顔の見える関係で緊密に連携を取るよい機会だった。
 そこで
 「今年の冬は雪がなくて、雪除(ゆきの)けをしないもんだから、皆、体重が増えて、糖尿病のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)* が1くらい上昇して大変だ。❨=糖尿病が悪くなった❩」(*血液の赤血球の中のヘモグロビンという蛋白質に、血液中のブドウ糖が結合した糖化ヘモグロビンのこと。一旦できた糖化ヘモグロビンは、赤血球の寿命(120日)が尽きるまで元には戻らない。高血糖が続くと糖化ヘモグロビンの割合が多くなり HbA1c の値は高くなる。正常値は 4.9~6.0 % である。)
 「そうですね、ホント、私もそれで困っています。」
と、開業医の先生方は皆、口をそろえた。
 確かに当院の外来に通院する患者にも当てはまる患者はいるが、地域で大変なことになっているという実感はなかった。地域に根を張って地道に診療に当たる開業医の先生方の話には頭が下がる思いがした。

 雪除(ゆきの)けをしない+食事の量は同じ=運動不足+カロリー摂取量過剰 ⇒ 肥満 ⇒ 糖尿病の増悪

なる仮説だが、ひとつ疑問があった。果たして、雪除(ゆきの)けをしないことは運動不足の原因となるほど雪除(ゆきの)けには運動量があるのだろうか?
 調べたところ**、除雪作業の運動強度は高いのだ。(**https://北海道情報. net>北海道での生活 を参考にした)
 雪かきや雪降ろしの消費カロリーは、体重 60kg の人が1時間、スコップで雪かきをした場合で 360kcal にもなる。また、雪かきの運動強度は 6.0mets(メッツ) で、ボディビルダーがやるようなウェイトトレーニング、バスケットボールといった激しい運動と同じレベルなのだ。
 例年の降雪のある冬は、午前3~4時に町内に除雪車が走る。除雪といっても道路の雪を左右の道路脇にどけるだけなので、道路に面した家の前には雪の壁ができる。皆、朝の4時頃から雪除(ゆきの)け***(***庄内では「雪除(ゆきの)け」という呼び方が多い)し、雪除(ゆきの)けが終わってやっとひと段落。これを午前に1回、午後に1回、さらに日中の降雪に対して随時する。ホント、大変なことだ。肥ってる暇はない。成る程、
 雪除(ゆきの)けがない ⇒ 糖尿病が増悪する
なる仮説は正しいと思った。

 さて写真は2024年2月1日の羽越本線の通称「余目(あまるめ)のS字カーブ」にある踏切である。

 毎年冬期間は積雪のため閉鎖され通行止めになる。が、今年は年が明けても雪がない。
 2022年2月はこの踏切には膝まで雪が積もっていた。この踏切に至る農道も未除雪で辺り一面の未踏の銀世界だった。雪をかき分け踏切に到達。その際に、積もった雪の下を流れる用水路に半分転落しかかった恐怖の体験をした****。(****NOVEL DAYS 一般小説:雪は全てを覆い尽くす(用水路編 後日談);2022年2月18日更新 を参照)
 それでも2019年8月から国鉄型気動車キハ40系の後継車両として投入された新形式の電気式気動車GV-E400系が、雪煙を巻き上げて力走する力強い冬の雄姿をカメラに収めることができた。(写真2↓)


 私は降雪、地吹雪の厳しい冬を「…。」黙って生き抜く庄内の人々に対して尊敬を通り越して畏敬の念を持っている。
 だから雪のない冬の庄内は間抜けて見える。ただ暗くて寒いだけ。そして肥って糖尿病も悪くなる…。困ったの~。

 んだんだ。
(2024年2月)
 

 
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