第1話

文字数 1,327文字

 私には朝風呂で行きつけの地元温泉がある。その温泉の更衣室の洗面台には3台のヘア・ドライヤーが置かれている。朝から晩まで、髪の乾燥に大活躍である。
 そのドライヤーは数年に一度、新品に交換される。が、数カ月から半年経つと、何故か1~2台のドライヤーの先端部分のプラスチックでできた吹き出し口の部分がなくなる。温泉の従業員の小父(おじ)さんに聞くと、ドライヤーを落としたりしてプラスチックの先端部分が割れてしまうのだそうだ。
 私は髪を(かわ)かすには吹き出し口のついたドライヤーの方が断然いい。風量が強く、風が当たっている部分の髪がなびき、いかにも乾いていく感じがする。(かた)や吹き出し口のついていないドライヤーは、何か頭全体に何となく風が当たっている感じで頼りない。
 さて、皆さんはどうですか?

 ある日、ネット・サーフィンをしていて面白い情報に出会った。プロの美容師がヘア・ドライヤーのこの問題について語っていた。ドライヤーは吹き出し口が

方が風量が圧倒的に多く、髪も速く乾燥するのだそうだ。ただし吹き出し口がついている方は風量は少ないが、風は速く遠くに到達する。
 へぇ~~~!? 意外だった…。

 さてここで呼吸機能検査のお話。呼吸機能検査の基本は肺活量の計測だ。スパイロメーターと呼ばれる機械を使って息を吸う力や吐く力を測定する。測定は機械に繋がったトイレットペーパーの芯のような厚紙の筒を咥えて、自分で最大限の息を吸ったり吐いたりする。息を吐く際の抵抗は全くない。
 フ~~~∼∼∼∼ッ ではなく ハッ! なのだ。
 胸一杯に思い切り空気を吸い込んで、それを全て吐き出した時の量が肺活量だ。肺活量の基準値は年齢や性別、身長 などによって異なるが、成人男性では 3,500 cc、成人女性では 2,500 cc が目安である。間質性(かんしつせい)肺炎や肺線維症などの病気で肺が硬くなると総じて肺活量は減少する。
 また胸一杯に吸い込んだ空気を、思い切り最大限の努力で一気に吐き出した時の空気の量が努力性肺活量で、特に最初の1 秒間で吐き出された空気の量のことを1秒量という。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支喘息(ぜんそく)、慢性気管支炎などで気道が狭くなり息が吐き難くなっていると1秒量は低下する。
 男性の肺活量の目安である 3,500 cc は直径約 19 cm の風船、女性の 2,500 cc は直径約 17 cm の風船の大きさの量に相当する。西瓜(すいか)だと大玉 Mサイズで直径約 20 cm、5 kg の大きさの量になる。

 ドライヤーの風量は呼吸機能検査の結果と似ている。
 写真は蝋燭(ろうそく)の火である。(←見れば分かる…)

 蝋燭の火を消す時は、皆、口をすぼめて狙いをつけてフ~~ッと吹き消す。これは吹き出し口がついたドライヤーの風で、1秒量が低下した呼吸状態に類似している。
 ところが、口をすぼめず口を大きく開けたままでハァ~~ッ!と息を蝋燭に吹きかけても火は滅多(めった)に消えない(ぜひ、お試しあれ)。これは吹き出し口のついていないドライヤーの風で、正常な肺活量の呼吸状態に似ている。ヒトの体は、(ごく)短い時間に多量の息を吸ったり吐いたりできるようになっているのだ。

 んだの~。
(2023年10月)
 
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