第3話 クリスマスはカーソンズで! 1975
文字数 3,576文字
【メニュー】
ファイヤーキングマグコーヒー 650円
ウェッジウッドカップ紅茶 650円
コーヒー 300円
紅茶 300円
(すべてのお飲み物にクッキー付き)
ミントレモネード 600円
※軽食はございません。
I Saw Mommy Kissing Santa Claus♪
ねえこれ、だれの曲かわかったよ!
オリジナルは1952年のジミー・ボイドの歌で、それを1970年にジャクソン5がカヴァーして、大ヒットしたらしいわ!
少年時代のマイケルが歌ったクリスマス・ソングと言えば、"Little Drummer Boy"も名曲よね。Come they told me パ・ラパパンパン~♪
A new born King to see パ・ラパパンパン~♪
この歌に出てくる「東方の三博士」は、幼子イエスのもとを訪れ、お誕生をお祝いして、「黄金、乳香、没薬」を贈った逸話で有名なのよ。
ああ、この歌で「僕」に「新しくお生まれになった王を見よ」と告げた「彼ら」というのは、東方から来た三人の博士たちなのね。
この「東方の三博士の礼拝」にちなむ公現祭は、クリスマスから12日後の1月6日、国や地域によっては1月2日から8日の間の日曜日に祝われているわ。
【本日のお品書き】◎Fire King Christmas at Carsons Mug 1975
そんな今日のイチオシはこちら!ファイヤーキングのヴィンテージ・アドバタイジング・マグです。
本日のコーヒーは、商店街の沢柴珈琲さんのスマイル・ブレンドよ。
このマグ、赤と青で雪の結晶が描かれていて、美しいデザインね!
光に当たると、コーヒーの色がうっすら透けて見える!これってガラスなの?
そう、ホウケイ酸ガラスという耐熱性の高い素材で作られているの。
ガラスだけど透明じゃなくて、半透明なガラスなのね!
こうした不透明や半透明の色つきガラスは、「ミルクガラス」と呼ばれているの。
もともとは、16世紀にヴェネツィアで磁器の競合品として生み出されたそうよ。
へー、ミルクガラス!だから、陶器とガラスの中間みたいな、不思議な質感なんだね。
19世紀の世紀末の時代、ミルクガラスの食器や工芸品は非常に人気があったそうなの。当時は、その神秘的な乳白色の色合いから「オパールガラス」とも呼ばれていたのよ。
ああ、アール・ヌーヴォーを代表するエミール・ガレの花瓶やランプシェードを見たことあるけど、あれって、オパールガラスと呼ばれる技法だったんだ!?
それで、今回の「ファイヤーキング」というのは、耐熱ミルクガラスのブランド名だったのよ。
アンカーホッキング社が1941年から1986年まで製造していた耐熱ミルクガラス製のファイヤーキングは、コレクターズ・アイテムとして世界的に人気なのよ。
Anchor Hocking Company(アンカーホッキング社)は、1905年から現在まで続いているガラス製品のメーカー。
1905年、オハイオ州ランカスターでアイザック・ジェイコブ・コリンズによって、同社の前身となるホッキング・グラス社が設立された。社名は地元のホッキング川にちなんで命名。
1937年、ホッキング・グラス社はアンカー・キャップ・アンド・クロージャー社と合併し、アンカー・ホッキング・グラス社となった。
1937年から1983年まで、同社はニュージャージー州セーラムにある1863年設立の米国最古のガラス製造工場を運営していた。
「'75」とプリントされているから、1975年にリリースされたマグなのね!
すごい、49年前のものとは思えないんだけど!?
「Summer Market '75」と記されているから、1975年のサマー・マーケットのどこかで配られたグッズなんじゃないか、と思うのよ。
一体、どこのサマーマッケットだったのかしら?気になるわね……
ほら、赤の飾り文字で「Christmas at Carsons」と大きく書いてあるでしょ?
青に白抜きの文字で「CARSON PIRIE SCOTT & co」とも書いてあるわね。
Carson's(カーソンズ)というのは、Carson Pirie Scott & Co(カーソン・ピリー・スコット・アンド・カンパニー)のことで、150年以上の歴史を持つアメリカの老舗百貨店だったそうなの。
カーソンズって、三越伊勢丹や高島屋みたいな存在だったのね。
Carson Pirie Scott & Co.(通称Carson's)は、1854年創業のアメリカの百貨店で、アメリカ中西部を中心に50店舗以上を展開していた。2006年にBon-Ton社に売却され、2018年にCarson'sの名で営業していた全店舗は閉店した。
1854年、スコットランド系移民のサミュエル・カーソンとジョン・トーマス・ピリーがイリノイ州のマレーズ乾物店で店員として働き、自分たちの店を開いたのが、このデパートメント・ストア・チェーンの歴史の始まりである。
イリノイ州オタワで乾物店を営むジョン・エドウィン・スコットがサミュエル・カーソンとジョン・トーマス・ピリーの最初のビジネス・パートナーとなり、カーソン・ピリー・スコット・アンド・カンパニーが生まれた。
シカゴにあるカーソンズの旗艦店は、アメリカ近代建築の巨匠ルイス・サリヴァンの設計で知られ、2007年に閉店するまで100年以上、百貨店としての営業を続けた。
シカゴのイースト・マディソン・ストリートの角、サウス・ステート・ストリート1番地にある商業ビル。ルイス・サリヴァンが1899年に設計した歴史的建物。
2007年2月に閉店するまで、カーソンズ百貨店として1世紀以上にわたって営業していた。
大規模改修を経て、現在はサリヴァン・センターと改称され、建物内にはシカゴ美術館付属美術大学などがある。
カーソンズ百貨店は、今はもう無くなっちゃったんだね……
そうなのよ、でもこのマグを見ると、人々がおめかししてデパートに出かけた時代、百貨店が輝いていた時代の一端がわかるわね。
断定はできないけど、1975年の夏にシカゴのカーソンズ百貨店で買い物客に配られたマグである可能性が高いわね!
サマー・マーケットなのにクリスマス仕様なのは、クリスマス・マーケットにもお買い物に来てほしい、というメッセージのマグだったのかしら?
「Christmas at Carsons」(クリスマスはカーソンズで)の謎が解けたわね!
「FLOOR COVERING DISTRIBUTORS」とも書いてあるから、カーソンズ百貨店のテナントのうち、特に床材を取り扱う店舗の販促マグだったのかも……?
なるほどー、こういうアドバタイジング(企業広告)のためのマグは、タイムカプセルのような面白さがあるわね。
そう、芸術のための芸術とはひと味違った、予期せぬ美があると思うわ。
この波打つようなボトムラインは、「スカロップ・ボトム」と呼ばれているの。
お花じゃなくて、scallop(ホタテ貝)をモチーフにしているわけね。
ファイヤーキングにはさまざまなマグがあるのだけど、このスカロップ・ボトムのシェイプは「コンコード・マグ」と呼ばれているのよ。
マグの底には「ANCHOR HOCKING/ アンカーマーク/ FIRE-KING/ OVEN-PROOF/ MADE IN U.S.A.」と刻印されているわね。
今回のマグは、表面のプリントから1975年製と断定できるけど、年代がはっきり分からないものは、刻印から推測したりするの。
この刻印は、1960年代中期から1970年代中後期の製造と言われているわね。
1975年と言えば、日本では『フランダースの犬』が放映されたり、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」が流行歌だったんだって。
1975年と言うと、サイゴンが陥落してベトナム戦争が終結した年だそうよ。今も昔も戦争をしているのね……
カルビーのポテトチップスやペヤングソースやきそばが発売開始されたのも、1975年らしいわ。そこから現在まで製造されつづけてるって、すごくない!?
ファイヤーキングはもともと日常づかいのための食器や容器だったのよ。当時は、地元の食料品店や金物屋で売られていて、販促品としてガソリンスタンドなどで配られることも多かったそうなの。
ファイヤーキングのアドマグって、ヤマザキの白いお皿的な存在だったのね。あの白いお皿も数十年経ったら、立派なコレクターズ・アイテムになるかも……?
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