第7章「これが視点だ!」視点タイプ3&4(三人称視点)
文字数 2,079文字
地の文を「私は」ではなく、「彼は」「彼女は」で書くのですが、
そのさい、「視点人物」を一人だけ選んで、その人の目を通してすべてを書きます。
一人だけ選ぶから、「一元」です。
(二人以上選ぶと「多元」になります。それは次のページで説明します。)
「私」から「彼/彼女」に変えます。
完了。
ぶっちゃけ、ほぼほぼ同じなんです。
「一人称一元視点」と、「三人称一元視点」。
カメラとマイクを持ってそのキャラクターの心の中に「潜入する」感じでしょうか?
ということで、キャラクターの「お気持ち」にこっそりズームインしちゃいましょう!
同時に両方の気持ちに侵入はなしです。それは視点タイプ5になります。
どうして一人だけかというと……
タイプ5は、いわば、キャラクターからキャラクターへ、ぴょんぴょん飛び移る感じですね。
そうではなくて。
タイプ3と4は、遊園地でライドのカートを選ぶように、ある特定のキャラクターを選んで、
それにいったん乗ったらそのカートでずっと移動しながらストーリーを見ていくわけです。
そういう、体験のしかたの違いです。
ヒツジは、逆だと思ってます。
早い話が、ジェットコースターでカートをぴょんぴょん乗り換えますか?
ラフティング(急流下り)のとき、ボートをぴょんぴょん乗り換えますか?ってことです。
それが、三人称「一元」視点です。
〈王女セフリッド〉バージョン#3(三人称視点/視点人物=セフリッド姫)
自分ひとりだけが目立っている――見知らぬ者たちがひしめく部屋に入ったとき、セフリッドはそう感じた。くるりと向きを変えて自室に逃げ帰りたかったが、ラッサがすぐ後ろにいたので前へ進むしかなかった。皆が彼女に話しかけ、ラッサに彼女の名を尋ねた。彼女は頭がごちゃごちゃでどの顔も同じに見え、誰が何を言っているのかわからず、いいかげんに答えてばかりいた。
ただ一度、ほんの一瞬、人混みを超えてひとりの女がまっすぐに見つめてきた。それが優しさのこもった熱い視線だったものだから、セフリッドは部屋を横切っていってその女と話せたらと強く願った。
少女がまとっていたのはテュファールの服、どっしりした赤のローブで、あの衣装をひさしぶりに見たとアンナは思った。王女は彼女の主[あるじ]、ラッサという名のヘム人の奴隷所有者に前へと突き出されて、小さくちぢこまり、必死に身構えていたけれど、自分の周りに他人には立ち入らせない空間を確保してもいた。捕らえられ、祖国を遠く離れていながら、彼女のおさない顔には誇りと優しさがあった――アンナが彼女の同朋たちに見て愛してきたあの美徳が。
あの子と話したい。アンナは、そう強く願った。
とくにセフリッド姫のバージョンで顕著ですね。前のページと見比べてみてください。
地の文が「彼女は」と語るとき、セフリッドちゃんのボキャブラリーにはない語を使ってもいいんです。
一人称では「とても心細くてさびしかった」だったけど、三人称のほうは直訳では「彼女は自分が孤立し人目についていることを感じた」なんです。大人っぽい難しい言葉を使っても違和感はありません。
それでも、
「私」で書くのと「彼/彼女」で書くのと、どっちが楽か? 楽しいか?
そのお話にはどちらが合っているか?
などなど、いろんな発見があるかもです。
「吾輩は猫である」と
「彼は猫である」はぜんぜん違う!
「メロスは激怒した」と
「おれは激怒した」はぜんぜん違う!
どっちも、後者は面白さ半減。
なぜでしょうか?
面白いね!
次回はいよいよ「神視点」の回です。
乞うご期待!