第6話 続・家族会議(その2)
文字数 1,923文字
(6)続・家族会議 <続き>
国王とチャールズはジャービス・ドル安を国民に納得させるための『補助金でお金をばらまく作戦』に乗り気のようだ。一方、ジェームス(第1王子)とアンドリュー(第3王子)は黙っているものの、特に反対しているわけでもない。
そうすると、基本的に俺の提案した『補助金でお金をばらまく作戦』で進めることになるだろう。
「それで、ジャービス・ドル安にした後はどうするのだ?」と国王は俺に質問した。
「まず、ジャービス国内の産業育成です。ジャービス・ドルが安ければ、ジャービス国内で生産した農作物や製造した製品がよく売れるようになります。また、外国企業がジャービス国内に投資しやすくなるので、外国企業にジャービス現地法人の設立や生産工場を提案しやすくなります。そうすれば、ジャービス王国のGDP(国内総生産)が上がるし、働く国民の給与も上がるでしょう」と俺は言った。
「それはいい案だな・・」国王は言った。
「ジャービス王国の経済が成長すれば、相対的にジャービス・ドルの価値は高く(為替レートが下がる)なります。ある程度ジャービス王国の経済が良くなれば、次は、ジャービス・ドル金利を米ドルと同等の4%まで引き上げます」
「また儲けようとしてるのか?」とチャールズが茶化すように言った。
「悪いですか? 理論値では1米ドル=130JDくらいまでジャービス・ドル高(為替レートが下がる)になるはずです。さらに、空売りしたヘッジファンドはジャービス・ドルを買い戻す必要がありますから、短期的には1米ドル=110JDくらいまでジャービス・ドル高が進むでしょう」
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。
「まあ、有り得る話だな。それで、いくら儲かるの?」とチャールズが俺に聞いた。
チャールズの興味は完全に『幾ら儲かるのか?』に移っている。
「1米ドル=170JDで1兆JD分の米ドルを売却(空売り)すれば約58億米ドル(=1兆JD÷170JD/米ドル)です。1米ドル=110JDで米ドルを買い戻しすればジャービス・ドルで6,470億JD(=約58億米ドル×110JD/米ドル)なので、利益は3,529億JD(=1兆JD ―6,470億JD)が出ます」と俺は答えた。
「こっちも利回りは35%か。往復で70%。いいな・・・」とチャールズは呟いた。
チャールズは完全にノリノリだ。儲けに目が眩んでいる。
国王とチャールズは俺の合法的なインサイダー取引を進める気でいる。
ジャービス王国にとっては儲かるし、経済発展するし、悪いことではない。
俺、国王とチャールズが雑談していたら、今まで黙っていたアンドリューが発言した。
家族会議に参加してから発言していなかったが、今回の為替政策は自分(外務省)に関係あるからだろう。
「ダニー、一つ質問なんだが・・・」とアンドリューは言った。
「なんですか?」
「大がかりな為替レート操作を計画しているようだが、他国に事前に説明しておいた方が良くないか?」
「他国に説明は必要でしょう。でも、政策金利を引き上げたり引き下げたりするのは、他国もしていることです。実際に、米国が米ドル金利を引き上げたから、今回のジャービス・ドル安(為替レートが上がる)が発生している訳ですし・・・」
「他国に説明が付けばいい、ということか?」
「ええ。まず、景気対策のために政策金利を引き下げます。これは尤もな理由です」
「まあ、そうだな・・・」アンドリューは言った。
「次に、インフレが発生したから政策金利を引き上げます。これも筋が通っています」
「まあ、そうだな・・・」
「じゃあ、問題ないですよね?」と俺はアンドリューに聞いた。
「いや。大量に米ドルを買ったり、空売りしたりするのはどう説明する?」
「それは、言わなくていいんじゃない?」
「言わなくていい?」アンドリューは俺に聞いた。
「コソコソやればいい・・・」と俺は小声で言った。
俺たちの話を聞いていたチャールズが割り込んできた。
「やっぱり、お前は卑怯者だなー。次はi6か?」チャールズは楽しそうに言った。
今までの話を読んでいない人のために説明すると、内部調査部では調査過程で投資が必要になったときにダミーの会社を使っている。i2が銅を海外から輸入する会社、i3が劣後社債を購入する会社、i4が不動産を購入する会社、i5が暗号資産運用業者を保有する会社だ。
話を聞いていた国王は言った。
「コソコソやればいいじゃないか。ダニエル頼んだぞ!」
―― え? 俺がやるの?
俺にはチャールズがガッツポーズしているのが見えた。
こうして、俺は国王から為替対応の担当に指名された。
国王とチャールズはジャービス・ドル安を国民に納得させるための『補助金でお金をばらまく作戦』に乗り気のようだ。一方、ジェームス(第1王子)とアンドリュー(第3王子)は黙っているものの、特に反対しているわけでもない。
そうすると、基本的に俺の提案した『補助金でお金をばらまく作戦』で進めることになるだろう。
「それで、ジャービス・ドル安にした後はどうするのだ?」と国王は俺に質問した。
「まず、ジャービス国内の産業育成です。ジャービス・ドルが安ければ、ジャービス国内で生産した農作物や製造した製品がよく売れるようになります。また、外国企業がジャービス国内に投資しやすくなるので、外国企業にジャービス現地法人の設立や生産工場を提案しやすくなります。そうすれば、ジャービス王国のGDP(国内総生産)が上がるし、働く国民の給与も上がるでしょう」と俺は言った。
「それはいい案だな・・」国王は言った。
「ジャービス王国の経済が成長すれば、相対的にジャービス・ドルの価値は高く(為替レートが下がる)なります。ある程度ジャービス王国の経済が良くなれば、次は、ジャービス・ドル金利を米ドルと同等の4%まで引き上げます」
「また儲けようとしてるのか?」とチャールズが茶化すように言った。
「悪いですか? 理論値では1米ドル=130JDくらいまでジャービス・ドル高(為替レートが下がる)になるはずです。さらに、空売りしたヘッジファンドはジャービス・ドルを買い戻す必要がありますから、短期的には1米ドル=110JDくらいまでジャービス・ドル高が進むでしょう」
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。
「まあ、有り得る話だな。それで、いくら儲かるの?」とチャールズが俺に聞いた。
チャールズの興味は完全に『幾ら儲かるのか?』に移っている。
「1米ドル=170JDで1兆JD分の米ドルを売却(空売り)すれば約58億米ドル(=1兆JD÷170JD/米ドル)です。1米ドル=110JDで米ドルを買い戻しすればジャービス・ドルで6,470億JD(=約58億米ドル×110JD/米ドル)なので、利益は3,529億JD(=1兆JD ―6,470億JD)が出ます」と俺は答えた。
「こっちも利回りは35%か。往復で70%。いいな・・・」とチャールズは呟いた。
チャールズは完全にノリノリだ。儲けに目が眩んでいる。
国王とチャールズは俺の合法的なインサイダー取引を進める気でいる。
ジャービス王国にとっては儲かるし、経済発展するし、悪いことではない。
俺、国王とチャールズが雑談していたら、今まで黙っていたアンドリューが発言した。
家族会議に参加してから発言していなかったが、今回の為替政策は自分(外務省)に関係あるからだろう。
「ダニー、一つ質問なんだが・・・」とアンドリューは言った。
「なんですか?」
「大がかりな為替レート操作を計画しているようだが、他国に事前に説明しておいた方が良くないか?」
「他国に説明は必要でしょう。でも、政策金利を引き上げたり引き下げたりするのは、他国もしていることです。実際に、米国が米ドル金利を引き上げたから、今回のジャービス・ドル安(為替レートが上がる)が発生している訳ですし・・・」
「他国に説明が付けばいい、ということか?」
「ええ。まず、景気対策のために政策金利を引き下げます。これは尤もな理由です」
「まあ、そうだな・・・」アンドリューは言った。
「次に、インフレが発生したから政策金利を引き上げます。これも筋が通っています」
「まあ、そうだな・・・」
「じゃあ、問題ないですよね?」と俺はアンドリューに聞いた。
「いや。大量に米ドルを買ったり、空売りしたりするのはどう説明する?」
「それは、言わなくていいんじゃない?」
「言わなくていい?」アンドリューは俺に聞いた。
「コソコソやればいい・・・」と俺は小声で言った。
俺たちの話を聞いていたチャールズが割り込んできた。
「やっぱり、お前は卑怯者だなー。次はi6か?」チャールズは楽しそうに言った。
今までの話を読んでいない人のために説明すると、内部調査部では調査過程で投資が必要になったときにダミーの会社を使っている。i2が銅を海外から輸入する会社、i3が劣後社債を購入する会社、i4が不動産を購入する会社、i5が暗号資産運用業者を保有する会社だ。
話を聞いていた国王は言った。
「コソコソやればいいじゃないか。ダニエル頼んだぞ!」
―― え? 俺がやるの?
俺にはチャールズがガッツポーズしているのが見えた。
こうして、俺は国王から為替対応の担当に指名された。