第2話
文字数 546文字
雲間から、隠れていた満月が顔をだした。
そのとき、あおの顔が月明かりに照らされて見えた。
きれいだ、と思った。
すべてが終わって後片づけをしているあおを、ぼんやりと眺める。まだ夢心地だった。
ハチワレ猫が、こちらを見る。
なんとなく、言えた。
猫の目が、きらりと光ったように見えた。
少し考えてから、俺は答えた。
猫は大きな黒目に月の光を映し入れながらゆっくりとベットに腰掛けてくる。
女に振られた腹いせに、男のデリヘルを呼ぶような男なんて。
あおの手が、頬に触れる。なまあたたかい、少し汗ばんだ猫の手を思わせた。
啄むように唇が俺の唇に触れる。意地の悪そうな黒目と目が合う。
ああ、やばい……。
俺が言う前に、あおが口を開いた。
この瞳を、ずっと見ていたいと思った。
デリヘルが帰ると、ほどなくして部屋の電気が付いた。停電が復旧したようだ。
夢、だったかもしれないとふいに思ったが、天井のマヨネーズは相変わらず事件発生中で、急激な脱力感に襲われた俺は風呂に入って眠ることにした。