森の妖精を探してください！
文字数 1,995文字
探偵のフレデリック様。本日は、お越しいただきありがとうございます。
こちらこそ、お招きいただきありとうございます。
早速ですが、本日の依頼が……。
マリアンネです！ 妖精を探してくださいっ！
くださいっ！！
…………。
なんですか、このご依頼は。
マリアンネお嬢様が、妖精を見たいと仰っておりまして。フレデリック様には是非とも妖精を一緒に探していただきたいと、そういうことですね。
どういうことですか。
お嬢様が、妖精を一度見たと仰っておりまして、もう一度妖精を見たいと。
妖精……、そんなもの居るはずありません。妖精なんて、気のせいですよ。
気のせいじゃないよーっ！！
気のせいだーっ！！
私も、お嬢様の気のせいだと思っております。
おーい。
というか、私に依頼しなくても、貴方様が一緒に行けばいいのでは？ 今回のご依頼に関しては、私も大して力になれません。貴方様と何も変わりませんよ。
妖精を見ることが出来るのは限られた人のみ。大人の私めには見えませんので……
私も大人なのですが。
妖精には様々な妖精がおります。太陽の精、月の精、水の精、森の精……
お菓子の妖精！！
お餅の妖精っ！！
どの妖精でも構いません。是非とも見つけてください。
どの妖精でも無理ですよ。
森の妖精を見たのーっ！！
では、森の妖精を探してもらいましょうか。
なんでも良かったのでは。
仕方ないですね、やりますよ……。ただ、報酬だけは約束してくださいよ。
もちろん、見つけていただけたらお支払いしますよ。
見つからなかったら、報酬無しですけど。
……はぁ？
探偵さん、行こ―よーっ！！
よーっ！！
まぁ、そういう訳なので、さっさと行ってください。
無茶な依頼を聞いているのですから、適当にあしらわないでください。
森は嫌いだけど、仕方ない。行くかぁ……。
妖精さ～ん、どこかな～♪
妖精なんて、見つかるはず無いのに……。
そんなこと無いですよ～！ 信じれば、きっと見つかります！！
そんな、根拠も無しに……
そういえば、君の名前を聞いて無かったけど、君は誰？
カルーナです。マリアンネお嬢様を見守っています！
見守る……、お付きの人ってことかな。
四六時中、見守っています！
仕事とはいえ、犯罪臭が凄いね。
ねぇ、探偵さ～ん！ 妖精、全然見つからな～い。
だから、妖精なんていないって……。
そんなこと言わずに、お話だけでも聞いてみるのはどうですか？
それは、ごもっとも。マリアンネちゃん、前に妖精を見たのはどこ？
この森の奥、かなぁ。
奥か、進むの嫌だなぁ……。
嫌なんですか？
嫌だよ、森の奥は虫が多いだろうし。
そんなこと言わないでくださいよ、楽しいこともいっぱいですよ？
まぁ、仕事だし仕方ないね。もう少し奥に行ってみよっか。
はーい！
妖精さーん、どこー！！
だいぶ奥に進んできたね……。
木々に囲まれている感じが、良いですよね～。
僕は嫌いだよ。部屋の中にいる方が良い。
もう、そんなに森を嫌わないでください！
妖精さん、いない……。
マリアンネちゃん、前に妖精を見つけたのは、何時頃？
夜に、お屋敷を抜け出した時、だったかなぁ？
勝手に抜け出さないように、危ないから。
じゃあ、夜まで待ってみよっか。条件を一緒にしたら、妖精が見つかるかもしれないし。
わかったー！！
妖精さん、どこーっ！！
マリアンネちゃん、そんなに怒らなくても……。
っていうか、日が落ちて辺りが見えないね。このまま進むのは危ないし、帰ろっか……。
せっかくここまで来たのに、ですか？
安全第一、二人に怪我をさせる訳にはいかないし。その代わり、次はちゃんと夜も探索できるようにするからさ。
うぅ、でもぉ……
妖精さん、いたーっ！！
えっ！？
妖精さん、綺麗///
凄い、綺麗ですね！！
すっごい、綺麗だなぁ……
探偵さん、妖精さんだよ、妖精さん！！
あぁ、これは蛍と言って、夜に光る虫で……
虫？
……。
いや、これが森の妖精さん、だね。
うん、妖精さん！！
（そっか。まだ蛍を知らないこの子にとっては、この光が妖精なんだ……）
探偵さん、妖精さんを見つけてくれてありがとう！！
僕は、何もしていないよ。むしろ、ありがとう。大人の僕に妖精を教えてくれて。
探偵さん、どうですか？
うん、凄く綺麗！ 森も、悪いことばかりじゃないね。
良かった！ 探偵さんも、また妖精に会いに来てくれますか？
そうだね。また今度マリアンネちゃん、カルーナちゃんと三人で妖精を見に来たいな。
探偵さん、ありがとーっ！
……三人？
マリアンネちゃん、どうかした？
三人って、私と探偵さんと、誰……？
誰って、酷いなぁ。あと一人はカルーナちゃんでしょ？
カルーナちゃんって、誰？
……え？
探偵さんって、変なの～！ 今日の独り言も、カルーナちゃんって人と喋ってたの～？
独り言……？
…………。
……？
……カルーナちゃんって、ひょっとして、妖精？
も～、私、木の精ですよ！ 最初に言ったじゃないですか～！
言ってた？ そんな、気のせい……
言ってるね……。
終
