Double-slit experiment

文字数 858文字

 アレックスが拾った本より

 光の正体は波か粒子かは科学者の間でも長い歴史の中で議論が交わされてきた。観測されてないと月の位置が定まらないなどという話はおよそ一般的な人々には理解に苦しむのではないだろうか。
 そこで、この章では二重スリット実験について解説することとする。
 例えば二枚の壁を横に並べて、その間に若干の隙間(スリット)を設ける。そのスリットを狙ってボールを投げると、その奥にある別の壁にあたり、その痕跡を残すものとする。これを繰り返すと、奥の壁には一筋の痕が残る。
 次にスリットを二つに増やすとどうなるか? 当然、二筋のボール痕が残される。ここで、ボールは粒子と見ることができる。これが粒子としての性質なのだ。

 では、次にその壁をプールに入れて、今度はスリットの間から波を通し、力が強くかかったところに痕跡が残るものとしよう。スリットが一本の時は、ボールの時と同じように一筋の痕が残るわけだが、二本にすると多数の筋が残される。これは、スリットを通過した波がお互い干渉した結果だ。これが波の性質である。

 これを踏まえて、光がお互い干渉しないよう、光の粒をダブルスリットに通すことを繰り返す。理屈の上ではボールの時と同じように、二筋の痕がつくはずだが、何故か多数の筋が発生する。つまり、粒子でありながら波として振る舞ったということだ。

 この話はこれで終わりではない。今度は光の粒が左右どちらのスリットを通ったかを観測することとする。すると不思議なことに、残される筋は二本だけになる。今度は粒子としての振る舞いを見せたのだ。そこには観測していたかしていないかの違いしかない。
 そこで、事前に観測していたかどうかを分からない状態で同様の実験をしてみると、その結果は二本の時と、多数の時とに別れた。勘のいい読者には察しがついたことと思うが、観測している時は二本、そうでない時は多数という信じられない結果が確認されたのだ。
 量子の間には過去や未来といった概念はなく、さまざまな状態が重ね合わされた状態で存在しているのかもしれない。
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