第1話 暗黒の星を彷徨って

文字数 693文字

腹減ったなあ。

喉乾いたなあ

うるさい!

ずっと、そればっかり!
君だって同じだろう。

もう3日も食べ物が見つからない。

水も今日明日でなくなる。

危機感を持つのも大切なことだろ?

それはそうだけど、声に出せばそれだけ喉が渇くよ。
声に出さなけりゃ、お互いの位置すら

わからないじゃないか。


それともなにか?

俺と歩き回るのは、もう嫌になったか?

そんなこと言ってないじゃない。

あんたこそ、私の面倒をみるのが嫌になってるんじゃ……ない?

君を拾ったときから、最後まで一緒に行こうって決めてるよ。

君が良ければ、だけどな。

……アリガト
え、なに?
なんでもない!


あ、痛っ!

どうした!?

大丈夫か!

大丈夫、大丈夫。

穴か何かで、つまずいただけだから。

ん? なんだろ、これ。

何か落ちてる。

ツルン
すべすべして、手に持ちやすい、板みたいな。

あ、こっちの面はツルツル。

なに? どれ? 

貸してみて。

ポトン
あ! この触り心地!

スマホじゃないか、懐かしいなあ。

何? スマホって。
そうか、君はスマホを見たこともない世代なんだな。

俺はかろうじて見たことがある。


これはな、一種の通信機だよ。

遠くの人と繋がれるんだ。文章や、声や、写真でね。

それ、ホント!?

じゃあ、ママにも繋がる!?

いや、それは……。
なに、なんで黙るの?

出来るの、出来ないの、どっち!?

……出来ない。

君のママはユートピアに乗ったんだろう。


宇宙に通信できるような手段は、もう地球には残っていないんだ。

悲しいだろうけど……。

あははは、そうだよね。

地球はもう壊れちゃうんだもんね。


ユートピアに行くって決めた人は、みんな地球にいる人と通信したくなんか……ないんだ……。


う……、うわああん。

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登場人物紹介

男の影

女?

女の影

すまほ

女びっくり

女まんぞく

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