制御された街1
文字数 1,232文字
それからぼくらは校門から、誰も動いていない学校を出て、道路に出たけれど、自動車はみんな「走る姿」で固まっていた。
歩道では人々が歩く姿で固まっていたし、道路工事をしているおじさんたちも、スコップを持って、それからドドドドドという道路を固める機械なんかを持って固まっていたし、もちろんその機械もドドドとは音を立てていない。
だから道路が固まるんじゃなくて、機械とおじさんたちが固まっている。
それどころか飛んでいる鳥さえも、空中で止まっていたんだ。
いや、止まっているのではなく、「スーパースロー」の状態なのだ。
そんな不思議な、何も動かない世界の中を、ぼくはデビルと二人でてくてくと歩き、そして茶トラ先生の実験室へ着いた。
実験室ではタイムエイジマシンと並べて、細長いテーブルがなんか置いてあり、その上には沢山のモニターがあり、その手前にはいろんなキーボードなんかも置いてあった。
そして茶トラ先生は食い入るように、それらのモニターを見たり、キーボードの操作なんかをしているようだった。
「二人とも、うかつな行動は取らなかっただろうな」
ぼくらが着くなり茶トラ先生は、ぼくらの顔を見てこう言った。
ぼくはデビルが、マイムマイムでピョンしてたゆりちゃんに接触しようとしていたことを思い出したけれど、茶トラ先生には一応こう言っておいた。
「大丈夫だよ。ぼくら、誰にも触れなかったよ」
すると先生は、
「繰り返すが、時を制御された人間と、されていない人間との間には、大変大きな電位差が生じているんだ。だからもし接触しようものなら、場合によっては落雷ほどの大電流が流れ、もしもそうなれば、両方の命が危ない」
「うん。分かってるよ。分かってるよね、田中君?」
「よく分かんねえけど、ゆりちゃんにはあまり近づくなってことだろう?」
「まあそれが分かればいい」
それから茶トラ先生はいろんなモニターを見て、納得したような顔をして言った。
「地震は想定どおりの規模で起こっておる。本来なら震度7くらいの激震だったはずだ。しかしわれわれは現在、地震の揺れをほとんど感じていない。つまりこれは時の制御がうまくいっている証拠だ。実際われわれは、時の流れの速さを3600分の1にしてあるからだ」
「それたしか、このあたりの時が『徐行』してるって話だったよね」
「たしかにゆりちゃんも徐行してたぜ。マイムマイムで無防備にぴょんしたままだったからな。へへ」
「無防備? 田中君、また変なこと考えるんじゃないぞ!」
「さてさて、それではこれから我々は、街の様子を監視する必要がある。時が制御され、地震は体に感じないほどに押さえ込まれてはいるが、実際には何が起こるかは分からないからな。時の制御の影響で、空間がひずんでおるかも知れんし、それによって地割れなどが生じる可能性もなきにしもあらず」
「それじゃこれから手分けして偵察?」
「そういうことだ」
歩道では人々が歩く姿で固まっていたし、道路工事をしているおじさんたちも、スコップを持って、それからドドドドドという道路を固める機械なんかを持って固まっていたし、もちろんその機械もドドドとは音を立てていない。
だから道路が固まるんじゃなくて、機械とおじさんたちが固まっている。
それどころか飛んでいる鳥さえも、空中で止まっていたんだ。
いや、止まっているのではなく、「スーパースロー」の状態なのだ。
そんな不思議な、何も動かない世界の中を、ぼくはデビルと二人でてくてくと歩き、そして茶トラ先生の実験室へ着いた。
実験室ではタイムエイジマシンと並べて、細長いテーブルがなんか置いてあり、その上には沢山のモニターがあり、その手前にはいろんなキーボードなんかも置いてあった。
そして茶トラ先生は食い入るように、それらのモニターを見たり、キーボードの操作なんかをしているようだった。
「二人とも、うかつな行動は取らなかっただろうな」
ぼくらが着くなり茶トラ先生は、ぼくらの顔を見てこう言った。
ぼくはデビルが、マイムマイムでピョンしてたゆりちゃんに接触しようとしていたことを思い出したけれど、茶トラ先生には一応こう言っておいた。
「大丈夫だよ。ぼくら、誰にも触れなかったよ」
すると先生は、
「繰り返すが、時を制御された人間と、されていない人間との間には、大変大きな電位差が生じているんだ。だからもし接触しようものなら、場合によっては落雷ほどの大電流が流れ、もしもそうなれば、両方の命が危ない」
「うん。分かってるよ。分かってるよね、田中君?」
「よく分かんねえけど、ゆりちゃんにはあまり近づくなってことだろう?」
「まあそれが分かればいい」
それから茶トラ先生はいろんなモニターを見て、納得したような顔をして言った。
「地震は想定どおりの規模で起こっておる。本来なら震度7くらいの激震だったはずだ。しかしわれわれは現在、地震の揺れをほとんど感じていない。つまりこれは時の制御がうまくいっている証拠だ。実際われわれは、時の流れの速さを3600分の1にしてあるからだ」
「それたしか、このあたりの時が『徐行』してるって話だったよね」
「たしかにゆりちゃんも徐行してたぜ。マイムマイムで無防備にぴょんしたままだったからな。へへ」
「無防備? 田中君、また変なこと考えるんじゃないぞ!」
「さてさて、それではこれから我々は、街の様子を監視する必要がある。時が制御され、地震は体に感じないほどに押さえ込まれてはいるが、実際には何が起こるかは分からないからな。時の制御の影響で、空間がひずんでおるかも知れんし、それによって地割れなどが生じる可能性もなきにしもあらず」
「それじゃこれから手分けして偵察?」
「そういうことだ」
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