第二章 IN THE BOX(10)
文字数 4,083文字
写楽が予選突破する条件は、Aに白を2枚以上投入していること。
これまでこのゲームを進めてきた暗黙のルールとして、質問の答えが「はい」となった場合、そこをブロックするのはその質問者、ということになっている。
だから誰もがAの白はその質問者がブロックすると思い込んでいる。
他のプレイヤーは質問されなかった箇所を漏れなくブロックすることだけに精力を注ぐ。
そこに死角が生まれる。
今回、Aの白を質問したのは私だ。
投入するかどうかは私が決定できる。
ここでわざと外せば、Aに投入された2枚の白は6点となり合計10点に届く。
まさに一発逆転のサプライズ。
勿論このわざと外しの手は何度も使えない。2度目はWに警戒されてしまう。
だから最初で最後のサプライズ。
それにAの白が1枚だけでもアウト。
だけど自分が質問したAの白の答えが「はい」となった時、神様が降りてきてくれたように感じた。
ここまできたら2枚入っているに決まっている。
そんな確信めいた予感があった。
それでも祈らずにはいられない。。
お願い、2枚入っていて!
全身全霊の祈りを奉げながら、すでに入っていないと分かっているBの青に投じた。
『子』の投入結果が発表された。
A→青1枚 白1枚 緑3枚
B→赤1枚 青1枚 緑1枚 白1枚
どうしてよっ!!
沙織は自分の目を疑った。
あるはずのないAの白が1枚入っている。
誰? ここに投入したのは?
誰かが私のわざと外しを予見して、ブロックしてきた。
そんなことをする奴は……W!!。
やられた!
沙織の顔から一気に血の気が失せていった。
茫然自失の状態で、ぽかんと画面を見つめる中、写楽の投入結果が発表された。
A→青1枚 白2枚
B→赤3枚
写楽はちゃんとAに白を2枚入れてくれていた。
手持ちカードが3色しかない中で、一発逆転を狙った渾身の投入だった。
写楽の狙いの中には、玄がAの白か、Bの赤を質問してくれれば、投入の時わざと外してくれるんじゃないかという読みがあったに違いない。
その想いは以心伝心私にも通じて、見事Aの白を引き当てた。
それなのにWに行く手を阻まれた。
「くそっ!! あ~悔しいっ!!」
沙織は天を仰ぎ、気が触れんばかりに叫んだ。
「あとちょっとで、Wをやり込めることができたのに!」
やっぱりWには敵わないって言うの……。
10点に最も近いと信じていた写楽が絶たれ、沙織は完全に崖っぷちに追い込まれた。
次の『親』番はシン。
持ち点は5点あるけど、残りカードが1枚しかないため予選通過の目は1ミリも残っていない。
沙織の頭の中はすでに10点を獲る最後の可能性、サクラに移っていた。
だがシンの質問の中で、このところずっと沈黙を保ってきたWがわざと外しを看破したことに気をよくしたのか、プレイヤーに動揺を与える発言をしてきた。
《 W 》 みなさ~~~ん。そろそろ気付き始めてますよね、玄に騙されているということに。
彼は私を予選落ちさせるためだと言ってみなさんに協力を求めておきながら、自分の決勝進出が決まれば、あとは知らんぷり。
普通なら協力してくれたみなさんのうちの誰かを予選突破させようと必死に努力しますよね。私ならそうします。
でも玄は助けるどころか、みなさんをつぶそうとしています。
みなさんのカードをこれでもかこれでもかとブロックし続け、ざまーみろとほくそ笑んでいるんです。玄はそういう奴なんです。二度と信用しては駄目ですよ。
このままいけば私は玄のおかげで2位で予選通過できるでしょう。
騙されたみなさん本当におかわいそう。心からお悔やみ申し上げます。
みんさんの仇は、必ず本戦で私が討ちますから応援してください。
Aに青は入れたか?
Wの甲高い乾いた笑い声が聞こえてきたような気がした。
必勝法を抑えられた恨みをここで晴らしたつもりなんでしょうけど、真実を知らないプレイヤーたちから見れば、Wの発言には信憑性があり、玄の方はただの偽善者として映っているに違いない。
沙織は己の無力さに腹立たしさと悔しさを感じた。
今私にできることは、信じてもらえるかどうかは分からないけど真実を訴えていくしかない。
《 玄 》 みなさん。私はみなさんのカードをブロックしてほくそ笑んだり、自分の予選通過が決まればあとは知らんぷり、なんて態度はまったくしていません。
それどころかみなさんの中の誰かに何とかして予選突破をしていただきたいと、必死に考えています。
写楽さん、今も私はAの白をはずしました。
だけどWが妨害するのです。
本当です。
私はみなさんとの約束を守るべく、Wを予選敗退させるよう全力でやっています。信じてください。
Cに白は入っていますか?
自分の言葉がプレイヤーたちにどこまで届いたのかは分からない。精一杯伝えたつもりではいた。
心を込めて真実を訴えればきっとみんなに届く。そう信じたかった。
だけど……。
《さっちん》って言うか、何その上から目線。そういうのムカつくんだよね。あんた、あたしの時、何かしてくれた? 結局自分がかわいいだけでしょ。超ムカつく。いっぺん死んでこい。
《GOGOGO》こいつ嘘やで! Wはんがゆうてるとおり、わての時はしっかりブロックしてきよった。玄のゆうてることは欺瞞で支離滅裂や。みんな信用したらあかんで。
たしかにGOGOGOの時はBの緑をブロックした。でもそれは、すでに赤が潰され10点の目がなくなったから。
10点の目がなくなったプレイヤーにわざと外しは使えない。ここぞという時の切り札として取っておく必要があった。
「そんなことぐらい、分かってよ!」
悔しくて目に涙が滲んできた。
みんな、ちゃんと考えてよ……。
だけど一旦レッテルが貼られてしまった沙織の心の叫びは、プレイヤーたちにはもう届かない。
《写 楽》 玄! 僕はあんたを信用していた。あんたなら僕を助けてくれると信じていた。だから僕はAに白2枚、Bに赤3枚という一発逆転の投入を行ったんだ。
そして祈った。あんたがこのどちらかのカードを質問してくれることを。
その願いは通じ、あんたはAの白を質問してくれた。
僕は飛び上がって喜んだよ。「よし、ツイてる。これで予選通過できる」てね。
だけど画面の向こうであんたは「世の中そんなに甘くねえよ」とでも言って笑ってたんだろうね。
いや、そもそも僕があと何点で10点に届くかすらまったく興味がなく、適当に質問したところをそのままブロックしたのかもしれないよね。
どっちにしても、あんたを信用した僕は馬鹿をみて予選落ちとなった。
僕はいつも誰かに裏切られる。やっぱ人間なんて信用できない。お前も、僕をいじめた奴等もみんなクズだ。生きる価値ねえよ。死んでしまえよ!
絶望という名の峡谷に突き落とされたような感じがした。
見上げれば、プレイヤーたちがまるで犯罪者を見るかのような目で、蔑みと怒り表情を浮かべている。
写楽の言っていることは尤もだ。
どんなに口で努力していますと言っても、結果として誰かに10点を獲らせることができなければ、それは何もしていないのと同じことになる。
そんな奴の言葉、誰が信じるっていうの?
欺瞞で裏切り者と言われても仕方がない。
私は本当に生きる価値のない女……。
沙織は自分の予選1位通過が確定的になったにもかかわらず、心は最下位予選落ちと同じぐらいどんより重たいものになっていた。
サクラの『親』となった。
数字上では手持ちカードを7枚持っているのでチャンスはある。
だけどそれは机上の空論だ。
自分の時の場合を考えてみれば分かるけど、12枚持っていても10点獲るのがやっとだった。それを7枚で成し遂げるというのは不可能というほかない。
おまけにわざと外しもWに読まれているし、プレイヤーたちの反感も最高潮に達した今、彼らに協力を求めることもできない。
サクラの予選落ちも確定的。
当然その事実に気付いているプレイヤーたちは、ただゲームを進行させるためだけの気の抜けた単純な質疑応答を始めた。
《廃 人》 Aに赤は入っていますか?
《サクラ》 はい。
《泥人形》 Bに赤は入っているか?
《サクラ》 いいえ。
《 W 》 Aに青は入れたか?
《サクラ》 いいえ。
《 玄 》 Cに白は入っていますか?
《サクラ》 いいえ。
《さっちん》Aに黄は入ってる?
《サクラ》 いいえ。
《GOGOGO》Aに緑は入ってまっか?
《サクラ》 いいえ。
《写 楽》 Aに白は入ってますか?
《サクラ》 はい。
《シ ン》 Bに青は入っていますか?
《サクラ》 いいえ。
プロ野球の消化試合を見ているような盛り上がりのない淡々とした流れ……。
沙織の目にもそう映っていた。
が、しかし……。
あれ?
沙織は首を捻りながら、もう一度チャットのやりとりを眺める。
確かにそうだ。
まだサクラの予選通過の可能性が残っている!
みんなの気持ちが緩み、それがWにも伝染して、つい隙が生まれた。
可能性は低いが、諦めるのはまだ早い。
沙織は速まる鼓動を抑えながら、状況を冷静に分析する。
サクラの回答に「はい」は2つしかない。
Aの赤とAの白だ。
もしこれらに投入されたカードがそれぞれ1枚ずつだったとしたら、まだ判明していないカードが5枚あることになる。
この5枚が、まだ質問されていないBの黄、緑、白のいずれかに投入されており、そこを誰からもブロックされなければ10点到達もありえる。
投入すべき色が3種類あるから『子』の予想が重複し、サクラが投入した色がブロック漏れとなる可能性もなくはない。
萎んでいた気持ちが一気に風船のように膨らんだ。
可能性を残すためには『子』の投入が重複していることが最低条件。
もちろん自分はすでに「いいえ」と回答のあったところに投入し、あとは運を天に委ねる。
神様お願いします。
どうか『子』の投入が重なりますように!
これが最後のチャンスなんです!
これまでこのゲームを進めてきた暗黙のルールとして、質問の答えが「はい」となった場合、そこをブロックするのはその質問者、ということになっている。
だから誰もがAの白はその質問者がブロックすると思い込んでいる。
他のプレイヤーは質問されなかった箇所を漏れなくブロックすることだけに精力を注ぐ。
そこに死角が生まれる。
今回、Aの白を質問したのは私だ。
投入するかどうかは私が決定できる。
ここでわざと外せば、Aに投入された2枚の白は6点となり合計10点に届く。
まさに一発逆転のサプライズ。
勿論このわざと外しの手は何度も使えない。2度目はWに警戒されてしまう。
だから最初で最後のサプライズ。
それにAの白が1枚だけでもアウト。
だけど自分が質問したAの白の答えが「はい」となった時、神様が降りてきてくれたように感じた。
ここまできたら2枚入っているに決まっている。
そんな確信めいた予感があった。
それでも祈らずにはいられない。。
お願い、2枚入っていて!
全身全霊の祈りを奉げながら、すでに入っていないと分かっているBの青に投じた。
『子』の投入結果が発表された。
A→青1枚 白1枚 緑3枚
B→赤1枚 青1枚 緑1枚 白1枚
どうしてよっ!!
沙織は自分の目を疑った。
あるはずのないAの白が1枚入っている。
誰? ここに投入したのは?
誰かが私のわざと外しを予見して、ブロックしてきた。
そんなことをする奴は……W!!。
やられた!
沙織の顔から一気に血の気が失せていった。
茫然自失の状態で、ぽかんと画面を見つめる中、写楽の投入結果が発表された。
A→青1枚 白2枚
B→赤3枚
写楽はちゃんとAに白を2枚入れてくれていた。
手持ちカードが3色しかない中で、一発逆転を狙った渾身の投入だった。
写楽の狙いの中には、玄がAの白か、Bの赤を質問してくれれば、投入の時わざと外してくれるんじゃないかという読みがあったに違いない。
その想いは以心伝心私にも通じて、見事Aの白を引き当てた。
それなのにWに行く手を阻まれた。
「くそっ!! あ~悔しいっ!!」
沙織は天を仰ぎ、気が触れんばかりに叫んだ。
「あとちょっとで、Wをやり込めることができたのに!」
やっぱりWには敵わないって言うの……。
10点に最も近いと信じていた写楽が絶たれ、沙織は完全に崖っぷちに追い込まれた。
次の『親』番はシン。
持ち点は5点あるけど、残りカードが1枚しかないため予選通過の目は1ミリも残っていない。
沙織の頭の中はすでに10点を獲る最後の可能性、サクラに移っていた。
だがシンの質問の中で、このところずっと沈黙を保ってきたWがわざと外しを看破したことに気をよくしたのか、プレイヤーに動揺を与える発言をしてきた。
《 W 》 みなさ~~~ん。そろそろ気付き始めてますよね、玄に騙されているということに。
彼は私を予選落ちさせるためだと言ってみなさんに協力を求めておきながら、自分の決勝進出が決まれば、あとは知らんぷり。
普通なら協力してくれたみなさんのうちの誰かを予選突破させようと必死に努力しますよね。私ならそうします。
でも玄は助けるどころか、みなさんをつぶそうとしています。
みなさんのカードをこれでもかこれでもかとブロックし続け、ざまーみろとほくそ笑んでいるんです。玄はそういう奴なんです。二度と信用しては駄目ですよ。
このままいけば私は玄のおかげで2位で予選通過できるでしょう。
騙されたみなさん本当におかわいそう。心からお悔やみ申し上げます。
みんさんの仇は、必ず本戦で私が討ちますから応援してください。
Aに青は入れたか?
Wの甲高い乾いた笑い声が聞こえてきたような気がした。
必勝法を抑えられた恨みをここで晴らしたつもりなんでしょうけど、真実を知らないプレイヤーたちから見れば、Wの発言には信憑性があり、玄の方はただの偽善者として映っているに違いない。
沙織は己の無力さに腹立たしさと悔しさを感じた。
今私にできることは、信じてもらえるかどうかは分からないけど真実を訴えていくしかない。
《 玄 》 みなさん。私はみなさんのカードをブロックしてほくそ笑んだり、自分の予選通過が決まればあとは知らんぷり、なんて態度はまったくしていません。
それどころかみなさんの中の誰かに何とかして予選突破をしていただきたいと、必死に考えています。
写楽さん、今も私はAの白をはずしました。
だけどWが妨害するのです。
本当です。
私はみなさんとの約束を守るべく、Wを予選敗退させるよう全力でやっています。信じてください。
Cに白は入っていますか?
自分の言葉がプレイヤーたちにどこまで届いたのかは分からない。精一杯伝えたつもりではいた。
心を込めて真実を訴えればきっとみんなに届く。そう信じたかった。
だけど……。
《さっちん》って言うか、何その上から目線。そういうのムカつくんだよね。あんた、あたしの時、何かしてくれた? 結局自分がかわいいだけでしょ。超ムカつく。いっぺん死んでこい。
《GOGOGO》こいつ嘘やで! Wはんがゆうてるとおり、わての時はしっかりブロックしてきよった。玄のゆうてることは欺瞞で支離滅裂や。みんな信用したらあかんで。
たしかにGOGOGOの時はBの緑をブロックした。でもそれは、すでに赤が潰され10点の目がなくなったから。
10点の目がなくなったプレイヤーにわざと外しは使えない。ここぞという時の切り札として取っておく必要があった。
「そんなことぐらい、分かってよ!」
悔しくて目に涙が滲んできた。
みんな、ちゃんと考えてよ……。
だけど一旦レッテルが貼られてしまった沙織の心の叫びは、プレイヤーたちにはもう届かない。
《写 楽》 玄! 僕はあんたを信用していた。あんたなら僕を助けてくれると信じていた。だから僕はAに白2枚、Bに赤3枚という一発逆転の投入を行ったんだ。
そして祈った。あんたがこのどちらかのカードを質問してくれることを。
その願いは通じ、あんたはAの白を質問してくれた。
僕は飛び上がって喜んだよ。「よし、ツイてる。これで予選通過できる」てね。
だけど画面の向こうであんたは「世の中そんなに甘くねえよ」とでも言って笑ってたんだろうね。
いや、そもそも僕があと何点で10点に届くかすらまったく興味がなく、適当に質問したところをそのままブロックしたのかもしれないよね。
どっちにしても、あんたを信用した僕は馬鹿をみて予選落ちとなった。
僕はいつも誰かに裏切られる。やっぱ人間なんて信用できない。お前も、僕をいじめた奴等もみんなクズだ。生きる価値ねえよ。死んでしまえよ!
絶望という名の峡谷に突き落とされたような感じがした。
見上げれば、プレイヤーたちがまるで犯罪者を見るかのような目で、蔑みと怒り表情を浮かべている。
写楽の言っていることは尤もだ。
どんなに口で努力していますと言っても、結果として誰かに10点を獲らせることができなければ、それは何もしていないのと同じことになる。
そんな奴の言葉、誰が信じるっていうの?
欺瞞で裏切り者と言われても仕方がない。
私は本当に生きる価値のない女……。
沙織は自分の予選1位通過が確定的になったにもかかわらず、心は最下位予選落ちと同じぐらいどんより重たいものになっていた。
サクラの『親』となった。
数字上では手持ちカードを7枚持っているのでチャンスはある。
だけどそれは机上の空論だ。
自分の時の場合を考えてみれば分かるけど、12枚持っていても10点獲るのがやっとだった。それを7枚で成し遂げるというのは不可能というほかない。
おまけにわざと外しもWに読まれているし、プレイヤーたちの反感も最高潮に達した今、彼らに協力を求めることもできない。
サクラの予選落ちも確定的。
当然その事実に気付いているプレイヤーたちは、ただゲームを進行させるためだけの気の抜けた単純な質疑応答を始めた。
《廃 人》 Aに赤は入っていますか?
《サクラ》 はい。
《泥人形》 Bに赤は入っているか?
《サクラ》 いいえ。
《 W 》 Aに青は入れたか?
《サクラ》 いいえ。
《 玄 》 Cに白は入っていますか?
《サクラ》 いいえ。
《さっちん》Aに黄は入ってる?
《サクラ》 いいえ。
《GOGOGO》Aに緑は入ってまっか?
《サクラ》 いいえ。
《写 楽》 Aに白は入ってますか?
《サクラ》 はい。
《シ ン》 Bに青は入っていますか?
《サクラ》 いいえ。
プロ野球の消化試合を見ているような盛り上がりのない淡々とした流れ……。
沙織の目にもそう映っていた。
が、しかし……。
あれ?
沙織は首を捻りながら、もう一度チャットのやりとりを眺める。
確かにそうだ。
まだサクラの予選通過の可能性が残っている!
みんなの気持ちが緩み、それがWにも伝染して、つい隙が生まれた。
可能性は低いが、諦めるのはまだ早い。
沙織は速まる鼓動を抑えながら、状況を冷静に分析する。
サクラの回答に「はい」は2つしかない。
Aの赤とAの白だ。
もしこれらに投入されたカードがそれぞれ1枚ずつだったとしたら、まだ判明していないカードが5枚あることになる。
この5枚が、まだ質問されていないBの黄、緑、白のいずれかに投入されており、そこを誰からもブロックされなければ10点到達もありえる。
投入すべき色が3種類あるから『子』の予想が重複し、サクラが投入した色がブロック漏れとなる可能性もなくはない。
萎んでいた気持ちが一気に風船のように膨らんだ。
可能性を残すためには『子』の投入が重複していることが最低条件。
もちろん自分はすでに「いいえ」と回答のあったところに投入し、あとは運を天に委ねる。
神様お願いします。
どうか『子』の投入が重なりますように!
これが最後のチャンスなんです!