第1話

文字数 977文字

 「百匹目の猿現象」*の前半の話をする。(*http://nimousaku.com > hyappikime_saru : 2018-01-22 更新 から引用した)
 宮崎県串間市東部の石破海岸から200m沖合に、幸島(こうじま)という周囲約4kmの島がある。1952年に、京都大学霊長類研究所の研究者たちが、この島にいる20匹の猿(ニホンザル)の薩摩芋(さつまいも)餌付(えづ)けに成功した。
 最初、猿たちは薩摩芋の泥を手や腕で落として食べていたが、1953年のある日、1歳半のメス猿が川の水で芋の泥を洗い流してから食べ始めた。この行動は、やがて若い猿たちや母親猿たちが次々とまねし始めて(←まさに猿真似(さるまね))、1957年には20匹中15匹が芋を川の水で洗って食べるようになった。
 ところが面白いことに12歳以上のオス猿は、芋洗いが群れに定着して10年経っても芋洗いをしなかった。(ここまでが前半のお話)

 総じて集団や組織で、新しいことは若者から広がり、年寄りはその変化について行けず、やがて置いて行かれることを示唆していて興味深い。

 昨年(2023年)の年末のある晩、街のお好み焼き屋に行った。冬の冷えた夜、大将の持ち場である一枚板の鉄板の前のカウンター席は、適度な熱気が心地よく特等席だった。
 んだの~、んだんだ。と、酒を呑みながら常連客との話が弾む。
 「先生、締めにお餅を食べますか?」
と、大将は地元農家が()いた丸餅を鉄板で焼いてくれた。
 餅が焼けてプク~っと膨らむ。
 「餅の味付けは何にしますか?」
 「僕は、砂糖醤油でお願いします。」(写真1↓)

 その時だった。店の若い娘が威勢よく答えて(いわ)く、
 「私はお餅は絶対にお好み焼きソースにマヨネーズっ!」
 「ええ~? 餅にそんな食べ方あるの~? 40年間、お好み焼きやいろんな物を焼いてきたが、そんなの初めてだぁ。」
と困惑する大将。
 写真2↓は焼き上がった餅のお好み焼きソースとマヨネーズである。

 「ん! 美味しいよ、とっても。」
 若い娘は喜々として食べていた。
 成る程…。餅もお好み焼きに入れるトッピングの一つなので案外、美味しいのかも知れない。今度、新しい味として挑戦してみようと思った。
 人口が減っている山形県庄内町のお好み焼き屋でも、若い力で新しいことが起こっている。それを実感した出来事だった。

 んだんだ。
(2024年1月)

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