年下上司
「花見の下見に来たっていうのに俺の顔ばかり見てどうするんだよ。だいたいお前が調子に乗って幹事なんか安請け合いするから、日曜だっていうのに俺まで朝っぱらからくそ寒い川っぺりを歩く羽目になったんだぞ」と、春木さんがさっきからずっと怒っている。ぷりっぷりだ。
春木さんは上司。だけど年下。そして可愛い。職場ではソフィスティケイトそのものなのに、プライベートではこんなに素直にむくれたり怒ったりするんだ。つまんないことで怒ったり愚痴ったりする彼を、俺は可愛いと思う。だって、彼のこんな子どもっぽい言動を知ってるのは俺だけだから。
今日だけ、今だけ、独占できる。春木さんと同じ会社に入社できてよかった。開発部に配属されてよかった、春木さんの下についてよかったと、心底思う。
俺にとってこれはただの花見の下見じゃなくて、初デート&お花見デート。このひとときを大事にしようと俺は思った。
ところが小一時間かけて場所を決め、「今日は早く帰って明日の早朝から俺、ここで場所取りしますよ」と言ったとたんに、春木さんの表情が変わった。どうしたんだ、春木さん……。
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