活動報告
八章の終盤にて、夕闇の中でリラのあとをつけていたのが、同じ研究室に所属するウルイという学者です。
彼も棘だらけの蔦に阻まれて、一張羅を台無しにしながら旧敷地にやってきました。
頼りなげなおじさんですが、探索に秀でた技術や知識は一級品で、独学により魔術を覚えたという相当な変わり者。
許可がないと習得できない呪文〈姿消し〉まで使えるというからかなりのものです。
(姿消しについて、詳しくは本文および用語解説をご覧ください)
ここでも、その変人ぶりをいかんなく発揮するだけでなく、リラと息ぴったりなところまで見せてくれます。
ウルイも、侵入を阻んだ蔦の茂みについては「湿原のチズイカズラのほうが紳士的だよ」とうんざりな様子。
このチズイカズラという魔物、リラがぼやいた〈沼地の吸血蔦〉と同じものです。
筆者が家の植え込みを剪定すると、決まってグサッと刺さるバラの棘。
まるで魔物じゃないかと腹が立ったので、大好きなノウゼンカズラの名前をもじって命名し、物語に登場させてやりました。
「血を吸うからスイカズラで決まりだな」と思っていたら本家がいたため、しかたなくチズイカズラになった、といういきさつです。
カズラ(葛)は蔓性植物の総称ですね。
リラの慎重な行動を願うウルイは、故アトワーズの遺言により、陰ながらリラを見守っていたことを打ち明けました。
それを聞かされたリラが感極まって涙を流します。
初めて描く感情だったので描写に悩みましたが、筆者自身の、卒業で離ればなれになる友人との別れや、退職時に感極まって泣きまくったことを思い出しながら書きました。
ここでせっかく上がったウルイの株が、このあと転げ落ちていく様子が書いていて楽しかったです。
それでも信頼している仲ということもあり、ふたりの距離感は近めに表現しました。
立ち止まった拍子にぶつかりそうになったかと思えば、戦闘ではリラの後頭部がウルイの顔面を強打します。
リラが気兼ねすることなく皮肉や文句を言うこともあれば、ウルイの配慮に欠けた態度にムッとすることもあるなど、普段から親しくしている感じも出せたかなと思います。
彼の協力もあり、隠された部屋へとつづく扉を見つけますが、リラはその不可解さよりも読みが的中した嬉しさで、ウルイの手をとって飛び跳ねます。
慎重派を自称するものの、彼女の中では常に知的好奇心がほかの感情を上回り、二章においては魔物に悩まされる住人そっちのけで「これじゃ研究が台無しだ……」と愚痴ったかと思えば、衝動的に魔物の討伐隊に加わったりもします。
三章で、小さな頃には好奇心が仇となり、ひどい風邪で死にかけた(しきたりを破って神域に立ち入ったからバチが当たった)とあるからよっぽどです。
猫を操る魔術(所在不明で未完成)を、いくさの産物だとわかっていながら解読したのも興味からですし、土人形との戦いにおいても好奇心が恐怖を凌駕します。
無事だからよかったものの、ついには見かねたウルイに危なっかしさを諭されて、しゅんとへこむリラでした。
【黒衣のリラ】
https://novel.daysneo.com/works/acdd7db59ac2a45160d4471fbf28457d.html
2024年 02月04日 (日) 12:42|コメント(0)
コメントはありません