セリフ詳細

 水俣病事件が、判決後も多くの課題を残した事実は、政治権力や市場経済だけでは解決できない「魂の救い」という精神的環境の領域を明らかにした。そのため、水俣の内発的発展論には、行政府・大企業に依存した「システム社会」から脱却せんとする「オルタナティブ社会」の志向が顕著に見られる。こうした中で、水俣という郷土を市民が再発見する「地元学」が提唱され、地域の絆を結い直す試みが模索されている。綾町と同様に、郷里の神社や照葉樹林が生い茂る風土が再認識された。島原一揆の天草諸島に面した不知火海の地域では、キリシタン浄土真宗の信仰が習合し、海の自然に往生する「魂の行方」が説かれた。それは、ただ行政府や大企業の罪を糾弾し、賠償を勝ち取るだけでは成就し得ない。水俣湾埋立地に安置された手造り石仏(水俣本願の会)は、犠牲者の方々だけでなく、この地下に眠る魚類をも含めた、一切衆生の生命を尊ぶ精神が示されている。水俣病をめぐる「浄土」「常世」「魂」といった言葉は、この公害事件が自然環境や政治・経済だけでなく、民俗信仰をも含む精神的な問題である事を示している。

作品タイトル:ちがくぶ!地球研究会

エピソード名:風土と内発的発展 地球生命の歴史(綾町・水俣・南三陸)

作者名:スライダーの会  slider

62|科学|連載中|44話|274,160文字

短編, 青春, 高校生, エッセイ, シリアス, 一人称, 女主人公, 群像劇, 現代, 一話完結

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 東京 渋谷区の、とある私立学校に「地学(地球科学)部」という部活があり、私達の世界である地球(岩石圏・水圏・大気圏)と宇宙に関して、主に自然科学的な探究を行っていました。地学部の部室である「地学教材室」は理科館4階にあり、地学部で過ごした日々、ベランダから眺めた天地の景色は、部員だった私達の大切な思い出です。

 やがて卒業し、大学に進学するなどした私達は、地学部の理念を継承した活動を続けるべく、渋谷区や横浜市 青葉区の大学を拠点とするサークル「地球研究会」を結成しました。地球研究会は、地理学・地学などを中心に、私達が暮らし生きる世界を学び、その中に存在する自我を見詰める、総合的ネットワークです。

 現在は、ここ「NOVEL DAYS」に公式ウェブサイトを開設し、國學院大学・法政大学・星槎大学などの学生・卒業生らが参加し、論文や随筆を投稿しております。大学の課題レポートとして執筆した小論文も掲載しているので、学業の参考になるかも知れません。アイコン・イラストの登場人物はフィクションですが、本文で取り扱っているのは現実世界のテーマです。


【詳細】

 地球研究会は、國學院高等学校地学部を母体とし、その部長を務めた卒業生らによって、2007(平成十九)年に「地球研究機構 國學院大学地球研究会」として創立された。國學院大学においては、博物館見学や展示会、年2回(前期・後期)の会報誌制作など積極的な活動に尽力すると共に、従来の学生自治会を改革するべく、志を同じくする東方研究会・政治研究会と連合して「自由学生会議」を結成していた。

 主たる参加者が國學院大学を卒業・離籍した後も、法政大学や星槎大学など様々な舞台を踏破しながら、探究を継続している。ここ「NOVEL DAYS」では、同人サークル「スライダーの会」が、地球研究会の投稿アカウントを兼任している。