セリフ詳細

そもそも、もしもそうであったなら、こうしてアナタの魂がこの世に遺っていることの説明がつかないんです。

そりゃ、ほんの数か月、数年程度なら、死後、何の理由も未練もない状態でこの世に居座ることもまれにあります。しかし、それが数千年ともなると訳が違う。……


つまり、こういうことなんです。この世に未練があるから、すなわち「死んでも死にきれない」からアナタはここにいるはずなんです。

強烈な「何か」が、アナタをここに縛り付けているんです。時間と共に流れ去る、朽ちて消えていく記憶とは、比べようもない「何か」があるんです、きっと。

でも、アナタはその「何か」を覚えていないという。

それならば、こう考えるのが妥当なんですよ。


アナタはその「何か」を、自らの意志で記憶の中から消し去った、と――

作品タイトル:Predestination-Living Deads' Life 0-1-

エピソード名:here -4-

作者名:波多野琴子  ktkhtn97125

55|ファンタジー|連載中|15話|29,564文字

聖書ラノベ新人賞, 日常, ファンタジー, コメディ, シリアス, 聖書, 妖怪, 怪物, ライトノベル, キリスト教, 旧約聖書, 吸血鬼

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〈それ〉は視た。故郷に降りかかる十の災厄、吹き荒れる風、そして、――




ミイラ男のアルフレッド(通称:フレディ)は、怪物保護支援施設《ヴァンパイアの館》で暮らしている。スタッフである吸血鬼のアルカード卿を初めとする七人の同居人たちと、なんやかんやとてんやわんやで楽しい日々を送っていた。
が、あるとき彼は気付く。

「……覚えて、ない」

そう、彼には生前の記憶がなかったのだ。


どうして彼は全てを忘れたのか。どうして彼は死してなお生き、この世に身をとどめ続けているのか。どうして生き続けるのか。彼の切なる問いに答え得る、唯一のものとは――


とある「生ける屍」の記憶を巡る、時を超えた物語。