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>人間対人間の関係を軽視・重きをおかないなどの選択をすることが極めて誤った選択だった


あまり出るのはやめようと思っていたのですが、本音で書いてくださっていることがわかるので、こちらには返信させていただこうと思います。経験豊富な方とお見受けします。


ぼくは何となく思うところがあれば色々な人にコンタクトを取るスタイルで、現場の職人さんから経営者まで色々な方から生のお話を聞く機会があります。コンタクトをとる際にも相手の事情に合わせた身分を軽く名乗る程度で、相手に合わせた業種の役員としてだったり、経営者としてだったり、投資家としてだったり、まれに実用書作家とか小説家の場合もあったりします。名刺もたくさん持っていまして、相手に合わせた名刺を渡すだけです。

(※ぼくは怪しい者ではないです、すべての名刺の業種でちゃんと専門家・プロを名乗れるはずですので……)


最近だと、あるレーベルさんに「至道流星という売れない小説家をやっている者ですが、どなたかぼくの担当を希望してくださる方はいらっしゃるものでしょうか」といった風のコンタクトをしましたが、これも思うところがあってのことですね。先方様とお話したところ、こんな方は他にいないと仰っていましたが、プライドが高くなるほどこうしたことはやらないんでしょうね。


小説家さんとも、稀に会います。似たような業種だと漫画家さんとも稀に会います。すべてのことが勉強になるじゃないですか。嫌な相手もいますけど、それすら良い経験ですし、無下に扱われることによって自分のプライドを抑え込む効果があります。もちろん良い方もいて、ちょくちょく繋がりが生まれたりしますね。

……で、ですよ。小説家さんとは、ギブアンドテイクで長く繋がるケースというのはあまりないような気がします。立派な人も多々いるのですが、普通とは違っている感じは確かにしますね。1つはプライドの高さ、もう1つはまさに「文章だけ書いていればいいんでしょ」的なスタンスの人が多いことが起因するのかなと感じていました。同輩に近いはずの漫画家さんからは、こうした印象を受けることが少なめなので、やっぱり小説家はかなり独特なのかもしれません。


漫画家さんはお一人お一人が、もう独立自営業主として、確固とした意識を持っている方が多いように感じます。そうした意識を持たざるを得ないのかもしれません。ぼくはちょくちょく色々なところで言ったり書いたりしていますが、漫画家さんの技能やスキルは作家・小説家のソレと比べて異様に高く、その反面で過当競争がいち早く進んでしまった分野であるからかもしれませんね。

誤解をしないで聞いてもらいたいのですが、「漫画家にならなくてよかった……」と思ってしまうほど、技能習熟までの道のりの過酷さと、その後の競争の激しさのバランスが取れていないように感じます。だからこそ独立自営業主としての意識を持たざるを得なくもなるのでしょうね。


小説家は、何なんでしょうね。

これは自らに言い聞かせる意味も込めて言うのですが、しょせんは文章書いてるだけじゃないですか。技能習熟までの努力とかしましたか? ぼくは何もしてません。二世代前の小説家とかは、文豪の模写とかをして努力したみたいな話もありましたが、いま世に出ている小説家はそんなことをしていないし、そうした方面に時間を費やしている人はプロになるのは難しいはずです。


今、ぼくらプロ作家に一番必要なことは、意識変革であろうと感じています。他の業種・業界の人々が普通に感じている意識が、ぼくら小説家にはまったく欠如しているように思います。

自分のプライドをへし折ることが最も大切な作業で、小説という形式の妙に偉ぶったテンプレートや権威を捨て去ることから始めてみませんか。そこをクリアすれば、決して漫画家さんたちに劣らない新しい分野が出てくるのでないかなと考えます。


プロ作家として継続するのは、たしかに東大に入るよりずっと狭き門なのは間違いないです。だからといって何か凄いわけではないんですよね。だいたい東大の人を尊敬しますか? 総理大臣だからといって皆さん無条件に尊敬しますか? まったく無関係ですよね。小説家なんて偉くもないし権威でもないし、一歩間違えれば単なるニートです。


こうして考えると、編集者さんに放置されたり無下にされたりするのは、別に日常的なことの一環じゃないでしょうか。そりゃ編集者側は50人とか抱えてますし、1作読むのに1日かかり、編集会議や社内政治とかもあるわけですから、こちらを放置なんてノーマルなことなんですよ。対編集という狭すぎる意識から脱却し、ご自身の足で立ってみませんか?


長くなって恐縮です。言葉足らずな部分も多く、本当はもっと書かねばならないのかなと思うところもあるのですが、ここで切り上げます。

「プロ作家としての生き残り」ということに関して言えば、ごくごく基礎的な意識を覆すことこそが、いの一番でぼくらが取り組まねばならない仕事なのだということをお伝えできればと思った次第です。

作品タイトル:NOVEL DAYS リデビュー小説賞 座談会(第二部閉幕!)

エピソード名:リデビュー小説賞 座談会 #2-1

作者名:講談社タイガ公式  kodansha_taiga

228|創作論・評論|完結|9話|126,227文字

【リデビュー小説賞】, 講談社タイガ, 講談社ラノベ文庫, 講談社ノベルス

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「NOVEL DAYSリデビュー小説賞 座談会」

現在第二部も終了いたしました。

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■参加者
司会:作家 至道流星

講談社ラノベ文庫 編集長
講談社タイガ 編集長

リデビュー賞応募者のプロ作家の皆様

■開催概要
講談社が主催する「NOVEL DAYS リデビュー小説賞」についての座談会を開催いたします!
この賞を開催するにいたったの経緯や、現在の出版市況、小説に対する思いなどを、縦横無尽に熱く語っていただきます。

「リデビュー小説賞」の応募資格をお持ちのプロ作家の方々からのコメント、ご意見、ご質問なども大歓迎です。

*応募者や応募検討中の方へのご質問などにもお答えいたしますので、今回の座談会への参加者(書き込める方)は「リデビュー小説賞」への応募資格のあるプロ作家の方に限らせていただく形にて開催してみます。

座談会は、2018年10月18日(木)の16時頃~1週間後の25日16時頃までを予定しております。

リデビュー小説の開催概要はこちらをご覧ください。
https://novel.daysneo.com/award/kodansha001.html

*こちらの座談会は開催当時の紹介です