セリフ詳細
有名カメラマンと孤独な青年の哀切な迷路
■
『紙葉の家』
著:マーク・Z・ダニエレブスキー
訳:嶋田洋一
ソニー・マガジンズ
■
たぶん私が布教したい本ナンバー2くらいかな……(ナンバー1やないんかい!)
※
かつてスーダンで撮影されたあまりにも有名な写真、「ハゲタカと少女」。
物語の主役は、その撮影者ケヴィン・カーターをモデルにしたと
彼は妻と二人の子供を連れて、アッシュ・ツリー・レーンの〈その家〉に引っ越した。亀裂の入った夫婦の絆の修復に努めるネイヴィッドソンだが、彼の想いを歯牙にもかけず、家は異常性を剥きだしにしていく。
何かがいる気がする、と訴える子供。何度計測してみても、外側より大きな値を示す内部。唐突に姿を現す、あるはずのない廊下への入り口。家はネイヴィッドソン一家を呑みこんで、不気味に膨張を続ける。
一方、身寄りのない青年ジョニーは、孤独死した老人ザンパノの家を訪れて、彼が死の直前まで書き記した膨大な記録に直面する。古いナプキンや切手の裏などに散らばる記録を繋ぎ合わせていくジョニー。それはネイヴィッドソンが入居した〈その家〉の異常性に関するものであった。
※
〈その家〉の謎と無意味さに憑りつかれ、膨張し複雑化する果て無い闇の中へと身を投じるネイヴィッドソン。
〈その家〉の記録に憑りつかれ、膨大な量の記録の断片を繋ぎ合わせていくジョニー。
二人の過去と現在、幻想と現実を混淆しながら、意味なき地獄が綴られていきます。
これはただの幻想小説ではありません。過去を克服し現在を取り戻そうとするネイヴィッドソンとその家族を描く通俗小説でもあり、ジョニーが生きる道を探そうとする青春小説でもある。
※
フォントはわざと読みにくいように組まれており、読み解く側は必死になる。無数の紙葉の断片を繋ぎ合わせるジョニーのように。そして難民の少女への罪の意識から逃れようと足掻くネイヴィッドソンのように。
※
とにかく幻想的な世界観にどっぷり浸かりたい方にお勧めの一冊。
ちなみに私は完読までに1か月かかりました。
既に絶版になっているので、どこかで見かけられた場合はすぐにご購入されることをお勧めします。
小説、漫画、映画、音楽…etc、誰しも好きな作品、影響を受けた作品があるはず!
そしてできることなら、みんなにもその作品を知ってほしいはず!
ここは自分の好きな作品をみんなで語るもよし、一人で延々と話し続けるもよし、そんな場所です。
作者としての作品語り、自分の作ったキャラクターのロールプレイでの語り、どちらでもOKです!