三奈乃の読書日記

[創作論・評論]

236

32,410

53件のファンレター

わたし――南ノ三奈乃が読んで面白かったと思う本を紹介していきたいと思います。
純文学多めになるかな? ……と思っていたのですが、エンタメもマンガも……もうなんでもありになってきました!
※表紙イラスト/ノーコピーライトガール

ファンレター

今村夏子

第1話、拝読しました。今村夏子さんはまだ読んだことがなかったです。芥川賞や太宰治賞を受賞されているかたなのですね!
『こちらあみ子』の紹介を読んで、お母さんにほめられると思って死産した子供の墓標を立てるところに、悪気がないだけによけい痛々しく感じました。このとき、あみ子は何歳だったのでしょうか? さすがに15歳ではなく、幼いときのことだろうと思いましたが…。

「純文学と大衆文学の違い」についての考察、すごく良かったです!! 「世間一般の常識、道徳観、価値観に寄り添って書くのが大衆文学」、「常識、道徳観、価値観に揺さぶりをかけるのが純文学」という南ノさんらしい定義が、とっても共感しました!
今まで純文学と大衆文学という区別は、あまり好きではありませんでした。ネット上では、文化の高級/低級とか、読者の高学歴(富裕層)/低学歴(低所得者層)といった差別と結びつける議論(それでお互いに見下してバカにし合う)をよく見るからです。
しかし、南ノさんの考える純文学の定義は「価値観に揺さぶりをかける」作品であること。アレクシエーヴィチがノーベル文学賞に選ばれたとき、詩人や小説家ではなく、ジャーナリストとして初めて受賞したことで話題になりましたよね。アレクシェーヴィチの『チェルノブイリの祈り』を読んで衝撃を受けたので、この作品はまさに南ノさんの定義する純文学だな、と実感します。
ライトノベルでは異世界に転生する物語が流行していますが、魔法やドラゴンが出てくるどんな異世界が舞台であっても、現代日本人の「常識、道徳観、価値観に寄り添って」物語は進みますよね。異世界にわざわざ日本の若者が行ったり、異世界で生まれ変わったりする(肉体は異世界人だけど精神は日本人)という設定にしているのは、読者が共感できるよう、日本人の価値観を持った主人公を登場させるためなのだなと思いました。
日本人の常識や価値観が通じない世界であるという意味では、エイモス・チュツオーラの『やし酒のみ』やバルガス・リョサの『密林の語り部』の方が、現実に存在する国や民族を描いているにもかかわらず、本当の「異世界」だなと読んでいて感じました。

「揺さぶられる感覚」は「不快」な場合もあるというのは、おっしゃる通りです。わたしが参加する読書会では、ノーベル文学賞やブッカー賞などの話題作を読むことにしているのですが、読後感が最悪、ひたすら嫌な気持しかない作品っていっぱいあります。むしろ読後感が清々しい、すかっとする、登場人物が全員幸せになる、といった作品はゼロです。でも、読んで時間を損した、失敗したとは思わないです。何かしら新しく得るものがあると思います。それを今までは上手く言語化できなかったので、読書会の課題本を読んでいるとき、それの何が面白いの?とか、不快になる本なら読まなければいいのでは?などと夫から言われていましたが、今度からは南ノさんの言葉を借りて、不快な本でも読む意味があるんだよ、と伝えたいと思いました。

次回も楽しみにしていますね^^

返信(1)

mikaさん、早速お読みいただきありがとうございます!
仰る通り、墓標を立てた時はさすがに15歳ではなく、あみ子は小学校高学年なんですが、でも、いくら小学生でも普通はそんなことしないですよね…。しかも、墓標の字を片思いの相手の「のり君」に書いてもらったため、「のり君」が両親に連れられて泣きながら謝りにくるなど大問題に発展してしまうんです。お母さんはその日以来、ひどい鬱状態になってしまいます。

純文学と大衆文学というのは、日本では、文学賞でも掲載誌でも、すごくはっきり分かれてしまっていますよね。mikaさんの仰る通り、私もこうした区別は必ずしも必要だとは思わないんです。大衆文学でも心の底から感動する作品もあるし、純文学だって全然心に響いてこない作品もありますよね^^;
昭和三十年前後には、純文学と大衆文学の中間という意味で、「中間小説」という呼称が生まれて、山本周五郎、井上靖、松本清張などが中間小説の代表的作家とみなされたりもして、「小説新潮」などは、出版業界的には中間小説の雑誌という位置づけなんだそうですが、その一方で、今でも芥川賞は、所謂「五大文芸誌」に掲載された作品からしか選ばれないなど、画然とした違いがやっぱり存在しますよね…。

それにしても、ノーベル文学賞やブッカー賞の話題作の読書会に参加されるmikaさんが、ライトノベルも読まれるというのが(そのことは度々うかがっているものの)、いつもながら驚いてしまいます^^
私はライトノベルというのは今まであまり読んだことがなかったのですが、mikaさんのお話をうかがっていて、読んでみたいと思うようになりました。でも、ライトノベルってあまりにも多量で、どこから読んでいいのかよくわかりません。もしいつか機会がありましたら、mikaさんお薦めのライトノベルなどを教えていただけたらありがたいなあ、と思います^^

『チェルノブイリの祈り』、実はちょうど私も読んでみようかなと思っていた作品でした。mikaさんが「衝撃を受けた」ということで、これは是非読まなければと改めて思いました。ありがとうございます!(*^^*)